嘉神・龍也 & 幕田・小枝

●龍也の小さな進歩と大きな愛!?

 クリスマスイヴの夜、龍也と小枝は2人だけの時間を部屋で過ごしていた。
 七面鳥の丸焼きにオードブルをテーブルに並べて、一緒にジュースで乾杯して……そんな夕食を楽しんだら、後は2人だけのひととき。
 テーブルを片付けて、ソファに腰掛けた小枝の腰に、龍也はそっと腕を回す。
 それに気付いて「わわっ」と慌てふためきながら赤くなる小枝。ちらっと龍也を見れば、彼の顔もまた赤くなっているように見えて……照れ恥ずかしさを感じながらも、思わず笑う小枝の姿に、龍也は何事も無かったかのように脇に置いておいた箱を取る。
「小枝、これ」
 龍也が取り出したのは、美味しそうなクリスマスザッハだった。
 ちょこんと乗ったトリュフチョコレートが、また可愛らしいそのケーキは、龍也から小枝へのクリスマスプレゼント。
「わわっ、美味しそうです〜」
 思わず瞳を輝かせる小枝。龍也は箱からザッハを取り出すと、そのまま右手に持ったそれを彼女の口元に近付ける。
 ほら、食べて。
 まるで、そう言うかのように。
「えっ、えっ?」
 ケーキと龍也を交互に見る小枝だが、龍也は薄く笑いながらケーキを掲げるだけ。
 食べるまで、ずっと離してくれそうにない。
「……あーん」
 ぱくっと、ザッハを一口食べる小枝。もぐもぐと食べるその様子を眺めて龍也は笑いつつ、自分もザッハを一口食べて。
「美味いな」
「ん……美味しいのです……」
 龍也の言葉に頷けば、また小枝の目の前に差し出されるザッハ。
 そのまま、2人は交互にザッハを味わって。

「……ごちそうさま」
 ザッハが無くなった後、龍也は空いた手でも、小枝のことを抱きしめる。
 両腕で、ぎゅっと。
 彼女を背中から抱きかかえれば、触れた場所から互いの温もりが伝わり合う。
 その体温の存在が、まるで、お互いにお互いが大切な存在であることを再確認させるよう……。

「……メリー・クリスマス」
 2人は見つめ合うと、ただそれだけ言葉を交わして。そのまま寄り添いながら、2人だけの時間を過ごすのだった。




イラストレーター名:たぢまよしかづ