雪神・久遠 & 守森・姫菊

●Christmas confined in eyes

 クリスマスパーティからの帰り道の途中で、久遠と姫菊は夜の公園を通りかかっていた。
「……少し休んでいかないか?」
 ふと公園を見やった久遠は、そう姫菊に誘いかけた。
 公園は通り道。ほんの少し立ち寄る程度なら、そう遅くもならないはずだ。
「うん、いいよ」
 姫菊はこくりと頷いて、久遠と並んで公園に踏み込む。
 いつしか降り始めた雪に、地面は薄く覆われている。
 他の誰の気配も無い静かな公園で、2人は一歩、また一歩、足跡を刻んでいく。
「あ、ベンチがあるよ」
 そう姫菊が見つけてベンチに近付く。そのまま、雪を落として座ろうとするが、でも、それをそっと久遠が遮る。
 その前に、伝えて起きたい事があったから。
「……今日は誘いを受けてくれて感謝だ。……いや」
 久遠は小さく首を振る。
 それは、決して今日だけの事ではないと、思い至ったからだ。
「今日に限らず、いつもありがとう。本当に、いつも」
 彼女が傍にいてくれること。
 それが、自分にどれ程の力を与えてくれていることか。
 ……彼女が、とても大切なのだと、そう実感すればするほど、想う気持ちは深まっていくのだ。

「――愛している」
 気付けば、そっと片手で姫菊の頬に触れ、そう彼女を見つめていた。
 それだけでは、止まらない。
 ゆっくりと、そっと彼女に顔を寄せていく……。
「あ……」
 それに気付いて、姫菊はそっと瞳を閉じた。
 胸は、恥ずかしさと嬉しさが入り混じった感情でいっぱい。頬は真っ赤になるくらい、とても熱くなっているのが分かる。
 照れ恥ずかしさに、気を緩めたら思わず倒れてしまうんじゃないかと、そう思ってしまうほど。
 でも……そんな身体を両足で支えて、姫菊はそっと一歩踏み出す。
 2人の間にある最後の距離を詰めたら、あとは。
「……久遠先輩……」
 姫菊は、久遠に抱きつくと、そっとその腰に両手を回した。そんな彼女の身体を受け止めるように、久遠も両腕を彼女へと回す。しっかりと抱き合ったまま、2人は更に距離を寄せて……キスをした。

 大切な人への、大切な想い。
 お互いに向けられたそれを確かめ合った後も、2人は、もう少しだけ抱き合い続ける。
 恥ずかしそうに頬を染めて、顔を久遠の胸に埋まる姫菊。そんな彼女を、久遠は優しく抱きしめる。
 2人の上には、淡く小さな粉雪が、ずっと舞い続けていた……。




イラストレーター名:仁藤あかね