董院・紗響 & 近藤・陸奥

●二人だけで、もう一度…

「それじゃ、またねー!」
「今度は学園で!」
 楽しかったパーティーを終え、仲間達はつぎつぎと帰っていく。
 みんなを見送りつつ、紗響は陸奥にこっそりと目配せした。
 残るのは、この二人だけ。

 先ほどまでの賑やかさは、静けさへと変わっていた。
 紗響の部屋にあるベッドに、陸奥が座っている。
「はい、どうぞー」
 暖かいロシアンティーの入ったカップを陸奥へと渡す。
「あ、ありがとう……ございます」
 紗響からカップを受け取り、そのままゆっくりと口に含む。
 部屋の窓から見える夜景は、いつになく綺麗に映る。
 それは、ホワイトクリスマスだからか。
 それとも……。
「お酒の方がよかったかなぁ」
「私達……まだ、未成年ですよ」
 思わず陸奥が突っ込む。
「あ、いえ……その、このお茶で充分……です」
 後で言い直していたが。
「そう? それなら嬉しいなぁ」
 にこっと微笑み、紗響も陸奥の隣に座り、ロシアンティーを飲んだ。
「夜景、綺麗だねー。普段はそう思わないのに」
「そう……なんですか? こんなに綺麗なのに……」
「羨ましい?」
「………す、少しだけ……」
 くすっと笑みを浮かべて、紗響は口を開いた。
「陸奥さんが気に入ってくれたのなら、嬉しいな」

 どのくらいの時間が経っただろう。
 二人っきりで過ごして、もうすぐ深夜にさしかかろうとしている。
 二人はまた、ベッドに座って他愛の無い話をしていた。
「来年もこうしていたいね」
 紗響は夜景を眺めながら、ふと呟く。
「………ええ」
 陸奥は、頬を染めながら遠慮がちに頷いた。
 その様子を見て、紗響は僅かに笑みを浮かべる。
 陸奥の手に紗響の手が重ねられた。

 言葉は無くても、伝わるものがある。
 相手を見ていれば、わかることもある。
 だからこそ、二人で今を過ごしたい。
 暗がりの中、紗響と陸奥はゆっくりと、互いの唇を重ね合わせた。




イラストレーター名:はろ