●Crepuscolo
沈みゆく夕陽。
自分に寄り添う是空 の肩を優しく抱く章人。
屋上から二人が見つめる先には揺れるキャンドルの灯り。
そうして思い出すのは1年前のクリスマスのこと。
そっと是空に視線を落とす章人。
去年の今日。
恋人同士になった記念日。
今年もクリスマスがやってきた。
思い返せばこの1年間の間にも沢山の出来事があった、けれどもクリスマスをこうして変わらず一緒に過ごせる事が出来て良かったと心底思える。
キャンドルの灯りは、自分と是空を温かく包み込んでくれるが、何よりも一番温かいと思うのはすぐそばにいる是空。
「寒くないか?」
是空に問いかけると、彼女は章人の方に振り返り小さく笑む。その笑みを愛しいと想い、風邪を引かせてはいけないと彼女の肩に自分が着ていたジャケットを羽織らせる。
そうしてそのまま、彼女の細い体を抱きしめた。
毎日愛しい人と一緒にいられて嬉しいと思う反面、いつか失ってしまうのではないだろうかと不安に駆り立てられることもある。もしも彼がいなくなってしまったのなら、クリスマスイブは今自分の体を抱きしめる優しい腕や彼の事を思い出す悲しい日になるのだろう。
そんな彼女の気持ちを打ち消すように、自分はここにいると彼女の体を抱き直す。
大事な大事な婚約者。
ずっとそばにいて欲しいと思う女性。
温かく揺れるキャンドルの灯りに誓おう。彼女を守っていくと。
去年のクリスマスイブの事を思い出しながら、来年のクリスマスイブに想いを馳せる。
それは今と変わらず一緒に過ごせて、互いに笑っていられるのだろうか。
ずっとずっと、来年も再来年も5年後も10年後も、その先でさえもこの愛しい時間が続けば良いと思う。
相手の体温をすぐそこで感じられる喜び、離しはしない。
護ると誓ったのだから。
「また、来年も、な……」
彼女の耳元でそっと囁く。来年も一緒に過ごそうと。それはちゃんと言葉にいしなくても、彼女にはしっかりと届き小さく頷く。
ずっと俺の傍で咲いてくれよ。愛しい俺の花。
俺にもっと沢山の幸せを教えてくれ―――
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