●ネメシスくんとスカルくん〜ネメシスくんと聖夜の雪〜
クリスマス・イヴの夜、とある屋根の上に2つの人影があった。
煙突の近くに立つのは、サンタの衣装に身を包んだネメシスとスカルくん。遠目から見れば、本当にそこにサンタクロースがいるみたいにも見える。
彼らは今、サンタクロースの扮装をして、子どもたちにプレゼントを配るバイト中。後はここにプレゼントを配ってしまえばおしまいだ。
まるで物語のように、煙突から来たサンタクロースがプレゼントをくれたら、子どもたちもきっと大喜びするだろう。
「煙突からびっくりドッキリサンタさん。子供達も驚き桃の木でやがりますよスカルくん」
にっこりと笑いながら、ネメシスがスカルくんを見る。
何かを察したのか、スカルくんがすかさず『無理です』と書いた看板をネメシスに見せる。
が、それはネメシスには見えていないのか、もしくは見えているのに華麗にスルーしているのか、にっこりと笑ったまま言葉を続ける。
「煙突の中からサンタが出てきたら子供達もびっくりして喜んでくれそうですね」
それに更に『無理です』と書かれた看板をネメシスに見せるが効き目はない様子。
そこへネメシスがにこりとしたまま、言葉を続ける。
「このアルバイトが終わったら日当がでますので、それで料理やケーキを買って一緒に食べましょうねスカルくん。……という訳で、行ってGOスカルくん」
その言葉と同時ににっこりととてもよい笑顔と共に、どん。と、スカルくんの背中を押した。
哀れスカルくんはバランスを崩し、煙突へとまっ逆さま。
それにはっと何か思い出したかのように、ネメシスが慌てて煙突の中を覗き込む。
「メリークリスマス、スカルくん」
言い忘れていた言葉を大きな声で、煙突に向かって叫んでみる。
どさりという何かが落ちたような音と、ネメシスの言葉が煙突の中をこだまして……。
やがて、ボロボロになりながら戻ってきたスカルくんの袋は、すっかり空っぽになっていた。
「それじゃあ、帰ってパーティにしましょうか」
スカルくんと一緒に屋根を降りると、ネメシスはそう夜道を歩き出した。
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