●気になる存在から、誰よりも大切な存在へ
これは今日でなければ見られない風景。
ただの公園のはずなのに、まるで絵本の1ページみたいにキラキラしている。
木々に小さな噴水に、沢山の電飾が飾られて、夜になれば光の宝石たちがキラキラと瞬いていた。
そんな公園に将弘が夢美を誘っていた。
クリスマスツリーの様に飾りやイルミネーションで瞬く、公園の一番大きな木の前で夢美が持ってきたプレゼントを将弘に差し出す。
恥ずかしそうに俯き加減に差し出したのは、籐の小さなかご。その中にはドラジェと小箱が入ってる。
「鳥井さん、これクリスマスプレゼントです。受け取ってもらえませんか?」
「ありがとうございます。俺からもプレゼントです。」
将弘は夢美のプレゼントを受け取ってから、コートのポケットから白い小箱を夢美へと差し出す。
将弘がかごの中の箱を開けると、石榴石がはめ込まれた指輪が入っている。しかもストラップとしても使えるようにとなっていた。
夢美が白い箱の中をあけると、そこにはトパーズがはめ込まれた指輪が入っていた。そうしてネックレスとしても使えるようにとチェーンがついていた。
二人はプレゼントを見て、すぐに相手の顔を見て、お礼を言い合う。
「あの鳥井さん。これから名前で呼んでも良いですか?」
「もちろん構いませんよ。俺も夢美さんと呼んでも構いませんか?」
「はい。そう呼んでもらえると嬉しいです♪」
プレゼント交換の後、公園内をゆっくりと散策し色んな事を話をする。
そこで夢美が将弘に思い切ったように尋ねてみると、将弘は普段と変わらない優しい笑みで頷く。
お互いの呼び方が変わる。それがなんだかくすぐったくて、少し嬉しい。
はじめは俯き加減だった夢美も、いつの間にか笑顔で将弘を見てはにかんだような笑みを返す。
将弘はそんな夢美に普段と変わらない優しい微笑みを返す。
変わったのは呼び方だけじゃなくて、その関係も……。
この間までは気になる存在だった相手が、誰よりも何よりも大切な存在になる。
それがとても嬉しかった。
名字から名前へ呼び方が変わって、少しまだぎこちないけれどもそれもすぐになれていくだろう。
互いの幸せな笑みにその全てが込められているのだから。
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