●2人と2匹のクリスマス〜質素なんて気にしない〜
楽しいクリスマス。それをもっと楽しくするために朔と澪は部屋を飾り付けていく。
折り紙で作った星や、簡素なリースとクリスマスツリー。
それはとても素朴なものばかりだけれども、二人で一緒にするからとても楽しいし、とても嬉しい。
テーブルの上には二人で頑張って作ったクリスマスケーキとお菓子。それにジュースも揃えて準備はバッチリだ。
「……ま、ほら、質素なのがボクら流っていうか。ケーキあるからクリスマスっぽいし」
「気持ちがこもってたら立派なクリスマスなんよ!」
一通りの準備が終わり、飾り付けた部屋を見渡して澪の一言に、朔も同じように見渡して笑う。
「そーだと信じてる! ……ケーキ潰れてないかな?」
箱に入ったままのケーキがどうなっているか不安になった澪が、ゆっくりと蓋を開ける。
箱の中から出てきたのは、ソリにのった猫と犬のマジパンが飾られたガトーショコラ。
きちんと綺麗に箱の中にあったことに、ほっと胸をなで下ろす澪と朔。
さぁ。後は最後の準備だけ。
お揃いのサンタ帽を被った澪と朔の視線が同じ方向を向く。
視線の先には…………。
澪のペット、白い紀州犬・もずきち。
朔のペット、栗色の猫・もなか。
二人は片手に同じサンタ帽を持って、自分のペットとの距離をじりじりとつめていく。
抜き足差し足で、忍びより射程距離に入ったとたん。二人は同時に帽子を振りかざす。
しかしそこは二匹の野生の勘が働いたのか、それぞれの頭に帽子を被る前に素早く逃げた。
「あぁもう、大人しくかぶせろ! こらもず!」
「もなか、大人しくしてるんよ! 良い子にしてたら煮干あげるんよ!」
二匹の抵抗に澪と朔は悪戦苦闘。
やいのやいのと、がんばってなんとか二匹に帽子を被せることに成功し、達成感から良い笑顔を浮かべる2人を、2匹は渋い顔をしながら眺めていた。
そんな視線は軽く受け流して、澪と朔は顔を見合わせて笑い合う。
「4人でサンタさん、メリークリスマスなんよ」
「メリークリスマス、二人に二匹♪」
これで準備は整った。
顔一杯の笑顔で、クラッカーを派手に打ち鳴らして、楽しいパーティーの幕開け。
それではまず、クリスマスプレゼントの交換から……。
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