奏氣・大輔 & 彩河・雅季

●真っ赤なお顔の・・サンタさん?

「さて……」
 奏氣が回したノブはガチャリと音を立てたが、ドア自体は何事もなく開いた。自室のドアであるのだから当然と言えば当然なのだが、ただ一つノブの音とは別に微かな物音が室内でしたことにも奏氣は気づいていた。
「これは……」
 泥棒か何かかと言う考えが一瞬脳裏を過ぎり、勢いよく扉を開ければそこには。
「雅季……何やってるんだ?」
「あ……」
 窓枠に手をかけ固まっている恋人の姿があった。

「突っ立っている訳にもいかないよな?」
 軽く笑ってベッドに腰掛けた奏氣は「こっちに座るといい」と手招きし雅季を自分の横へ座らせる。
「で、どういう事だったんだ?」
「大輔先輩ヲ驚かそうと思ったんだヨ」
 サンタ服のミニスカを直しながら少し気まずそうに雅季は答えた。全てはサプライズパーティーの演出で、現状に至ったのははタイミングが悪かったせいだと。
「パーティーな。……パーティーは良かったが」
 その言葉にパーティーの様子を思い出しながら奏氣は「本当は雅季と一緒に回りたかったんだがなぁ」と呟く。
「それって今からじゃ遅いかナ?」
 ケーキや飲み物を取り出しながら雅季もポツリと呟く。
「そうだな、遅くはないな」
 顔を上げた奏氣はゆっくりと頷いた。それは二人だけのパーティーの始まり。

「大輔先輩の頭の角、赤鼻のトナカイのものデスね?」
 何時しか夜も更けて、電気を消した部屋で浮かぶ角のシルエットを見ながら雅季はクスッと笑う。角はあるのに鼻は赤くないと言いたかったのかもしれない。
「ふむ、だが真っ赤な顔で言われてもな。むしろ雅季の方が……」
「あ、赤くなんて無いヨぉ」
 月明かりの部屋でも顔色を察するのは充分だったのだろうか。薄暗い部屋で二人きりという状況にますます顔は紅潮し、からかうつもりだった立場があっけなく逆転する。
「確かにトナカイかも知れないが、それなら雅季はサンタだよな?」
 若干悪戯っぽい表情を浮かべて奏氣は上半身を際限なく雅季に寄せて行く。
「じゃあ……サンタから……プレゼントを貰おうかな」
「あ……」
 ベッドへ倒れ込んだ身体に奏氣の身体が覆い被さり、何かを言おうとした雅季の唇を奏氣のそれが塞ぐ。長く深い接吻はどちらからのプレゼントなのやら。
 長い二人だけの夜は更けて行く。




イラストレーター名:SATO-CHI