上山・誠示郎 & 六禮・霊夢

●冬の花園

 昨年も二人で一緒に花園に来ていた。
 自分たちにとっては初めてのデートの場所。
 思い出深い場所だから、また一緒に来たいと思っていた誠示郎の横には、寄り添うように歩いている霊夢。
 花は良い。そうして感心するのはその強さ。
 吐き出す息が白く曇る。
 寒いということが良く分かる。
 こんな寒空の下でもしっかりと咲き誇るその姿は、普段以上に凛々しく美しく見える。

 そんな花たちを眺めながら、霊夢も去年のことを思い出す。
 昨年誠示郎と一緒に歩いた迷路はどうなっているんだろう。そんなことを思いながら花を眺めていたら、誠示郎が声を掛けてきた。
「……腕、組むか?」
 昨年一緒に来た時は恋人同士ではなかったから、手を繋いだりするだけでも恥ずかしかった。
 でも今年は違うから、腕を組んだりするのにも遠慮はいらないのかもしれない。そんな誠示郎の想いを知ってか知らずか、霊夢はしっかりと彼の腕に自分の腕を絡ませる。
 誠示郎が迷惑がったとしても、霊夢は今日は離してやらないつもり。
 クリスマスにデート。公然といちゃつくのに、これ以上のシチュエーションはないから。
「……ちと寒い、暖めよ」
 霊夢は絡ました腕にぎゅっと抱きつく。そんな彼女がとてもかわいらしいと思う誠示郎。
 一緒に花を眺めて歩くだけだけれども、誠示郎はそれだけで十分に幸せ。さっきから霊夢の事ばかりが気になって、綺麗に咲いている花に、あまり目が向かないくらいだ。
 これまで色々な場所に行ったけれど、その都度いつも見ていたのは霊夢の事ばかり。
 きっと、これは惚れた弱み。

「出来るだけ傍にいたいんだ、今もこれからも」
 誠示郎の言葉に、花を見ていた霊夢は嬉しそうな笑顔を向けた。
「また……ここに来よう、約束だ」
 交わすのは小さな約束。
 またここに来れれば良いと思うから。
 そのまま誠示郎は、霊夢の顔に自分の顔を寄せて、そのまま唇を重ねる。
 抱きしめ合って、交わす口づけ。
 密やかな出来事。
 見ていたのは寒さの中、凛と咲き誇っていた花たちだけ。




イラストレーター名:ヤトアキラ