●おはよう
クリスマスイヴの夜。
ミキはずっと、湊人が帰ってくるのを待っていた。
そして、帰ってきた湊人。
やっと、二人っきりの甘いひと時を彼の部屋で過ごせる……そう思ってたのだが……。
現実はというと、連日のバイトで疲れていた湊人は、幸せなひと時を過ごす間もなく、ソファーで眠り込んでしまった。
「仕方ないわね」
ミキはそっと、彼の側で添い寝する。
疲れて眠る彼に、起こさないよう心の中で、お疲れ様と呟いて。
ちゅんちゅん……。
窓の外から、小鳥の声が聞こえる。
先に目覚めたのは、ミキだった。
顔に朝日が当たったからだ。
そういえばと、ミキは思う。
外が暗いから気づかなかったが、カーテンを閉めるのを忘れてしまっていたらしい。
「ん……」
眠そうにまぶたを瞬かせるのは、湊人。
どうやら、湊人も朝日で起きたようだ。だが、ちょっと寝ぼけている様子。
「おはよう」
そっと、湊人の頬にキスをするミキ。
「んん……ああっ! み、ミキっ!!」
湊人は思い出した。クリスマスイヴを恋人と一緒に過ごす約束をしていたことに。
そして、今はクリスマス当日だということに。
「すまん、すっかり寝ちまって……」
両手を合わせて謝る湊人にミキは、怒る様子は無い。
「いいのよ。疲れてたみたいだしね」
微笑み、許してくれるミキに湊人はほっとした表情を見せる。
「それにこれから冬休みもあるし、一緒に過ごせるから」
そこまでいって、ミキは思いついたように言葉を続けた。
「ねえ、一緒に朝ごはん、食べにいかない?」
そのミキの提案に湊人は、微笑み頷くのであった。
イヴの時間は終わってしまったけれども。
クリスマスはまだ終わっていない。
そう、全てはこれから。
これから始まる冬休みと共に、一緒に……。
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