●寒くも、暖かな日−2人で1つの影−
楽しかったクリスマスパーティーは、あっという間に終わってしまった様な感じがする。
きっと、それは大好きな人と過ごしたからかもしれない。
いつもいつも、大好きな人と過ごす時間は短く感じてしまう。
学校を出て、久遠を送っていく事にした護。
すっかり夜になり、昼間よりもずいぶんと冷え込んでいる。
久遠は思わず両手をコートのポケットに入れて、少し背を丸めながら歩く。
そんな久遠の様子を見ていたら、彼女が寒がっていることが護には分かった。ふと、彼は自分のコートで彼女の体を包み込むようにして、久遠を後ろから抱き寄せる。
自分の意志とは関係無しに、引き寄せられた体。
何が起こったのか久遠が理解するまで、ほんの少しだけ時間が必要だった。
少しの空白の後、自分が護に後ろから抱きしめられていることが、ようやく分かった。
さっきよりも温かいのは、彼の体が近いから。彼のコートの中に自分が包まれているから。
「これで寒くない」
「これなら、暖かいですね」
すぐそこで響く護の優しい声に誘われて、久遠は微笑みながら振り返る。
彼女の、その笑顔が護にとっては、とても愛しくて……。
そのままの状態で、護はプレゼントが入った小箱を、久遠の掌にのせた。
「メリークリスマス、久遠」
小さな小箱になんだろうと首をかしげた久遠の瞳が、その言葉に瞬いた。
「はぅ、ありがとうございます。メリークリスマス!」
そう嬉しそうに顔をほころばせながら、久遠はそっとプレゼントを両手で抱く。
大切そうに、大切そうに。
それから、そっと護の方を振り返って……。
「……大好きですよ」
その言葉は、照れ恥ずかしさから小さな声になっていたかもしれないけれど、でも、それは確かに、久遠の心の底から紡がれた言葉。
そんな彼女を、護は愛しそうに、優しくコートで包み込んだ。
冬空の下、緩く伸びた2つの影は、いつしか1つに重なっていた。
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