●王様と猫 〜聖夜のぬくもり〜
ぱちぱちと暖炉の薪が燃えている。
ここは久の家の別荘の一室。
部屋の中には、たくさんの買い物袋が置かれ、その口が開かれていた。
どの買い物袋も先ほど買ったばかりのもの。
新品同様のそれが並んでいる様は、まるで、この部屋で店を開くようでもあった。
もっとも、そんなことはせず、全てこの部屋にいる二人のものとなるのだが。
ぱちぱちとまた、薪が鳴った。
暖かい暖炉の側を陣取っている皓は、ホットチョコレートをふうふうしながら飲んでいた。
(「はじめてきたけど、なんか懐かしい気がする。久と一緒だからかな」)
辺りを見渡しながら、こくんとホットチョコレートを一口含む。
甘くて暖かいチョコレートが嬉しくてたまらない。
暖炉の前にぺたんと座り、じっと暖炉の炎を眺めながら。
(「……なんだか、ずっとこんな時間が続けばいいな」)
ゆらゆらと目の前の炎は揺れている。
(「春がきて、なんだか遠くなるような気がするのが悔しい。ずっと一緒にいれるわけでもないけど、できる限り、一緒にいれたらいいな」)
そう思いながら、ずっと暖炉の炎を眺めていた。
その皓の様子を、久はソファーに座りながら眺めていた。
その手には、皓の持つものと同じホットチョコレート。
それを飲みながら、久は皓を眺めている。
(「誕生日プレゼントに去年のクリスマスプレゼント、そして今年のクリスマスプレゼント……皓が気に入ってくれて嬉しいよ」)
心の中で、渡したものを思い出した。誕生日にはセーターを、去年は猫耳を模した可愛らしい帽子、そして今年は真っ白のカシミアのマフラー。
そのどれもが、彼女に気に入ってもらえた。
そして、その彼女はすぐ側に居る。
可愛くてとても綺麗な皓。
久にとって、彼女とゆっくり過ごせる、この時間が何よりも嬉しい。
(「できることなら、このまどろみの様な時間を長く長く、感じていたいね」)
久は瞳を細めながら、そっとホットチョコレートを口にした。
ゆっくりと皓は振り向き、久を見る。
「今まで色々あったけど……おつかれさま。これからもよろしく」
「皓も同じ事を考えていたんだね」
思わず瞳を細め、久は続ける。
「僕の方こそ……来年もよろしく」
二人は微笑みあい、一緒にホットチョコレートを飲み干すのであった。
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