●夜通し…にはならない。高校生だからッ!
外は寒いが、部屋の中では暖かい。
いや、『アツイ』といってもいいかもしれない。
「くうっ、また負けたっ!!」
琴子が悔しそうな声を上げた。
彼女の前には、幾重にも重ねられていたであろう、色とりどりの積み木が崩れていた。
そう、彼女がやっているのは、ジェンガ。
幾重にも重ねられた積み木を崩さないように引き抜き、また積み上げるというゲームだ。
数時間前は楽しげに始まったジェンガ。
「……惚れた弱みって言うけど……ジェンガでは負けない!」
「ん? よくわからないけど、オレだって手加減しないからな!」
二人とも意気込んで、勝負に出たのだが……。
「もう一回っ!」
結果は琴子の連敗。
こんなに勝つつもりもなかったのだが、かといって、いまさら手加減すれば、相手も黙っていないだろう。
「じゃあ、もう一回だよ」
一瞬、話を変えて、別のことをしようかと思ったのだが……ハズルにはできなかった。
ぎらぎらと闘志を燃やす琴子。
話を変えたりゲームを変えたりできる雰囲気ではなかったからだ。
「じゃあ、オレから!」
積みあがった積み木から、琴子は慎重にその一つを引き抜いた。
何時間、遊んだだろう。
結局、琴子は勝てなかった。琴子の苛立ちがかえってよくなかったらしい。
後半になって途切れる集中力も、ゲーム最初から途切れるようになってきたからだ。
これ以上の勝負は無理だろう。それに……。
「もう一回っ! 今度こそ、勝つっ!」
そう意気込む琴子にハズルは残念そうに告げた。
「琴子、今日はここまでにしよう」
「何でだよ! まだまだこれからだろ!?」
「でも」
ハズルは静かに告げる。
「もうすぐ9時になるよ。この辺で終わりにしよう。前に遅く帰って、おばあさんに怒られたって言ってただろ?」
そのハズルの意見に、琴子はうっと言葉を詰まらせた。
あのときのことを、正確に思い出したのだ。
「う……わかった」
悔しそうに帰り支度を始める琴子。
支度をしながら、熱くなっていた頭も少しずつ冷えてきたようだ。
「ま、いっか。また来年もあるし」
前向きな考えの琴子にハズルは、そっと呼び止めた。
「琴子、ちょっといいかな?」
その手には、彼女に渡すためのプレゼント。
「メリークリスマス。また来年も一緒にいられるといいね」
琴子は驚きながらも、ハズルからのプレゼントを嬉しそうに受け取ったのであった。
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