関・銀麗 & ジュゼッピーナ・カミノギ

●絆のクリスマス

 赤い薔薇のロザリオは今は銀麗の手の中。
 いつの日か、その日が来たのならジュゼッピーナの手に渡るのだろう。

 いくらかの月日が流れ行った。

 そうして今日は聖なる夜。クリスマス。
「ん、来たようだね」
「ごきげんよう、お姉さま」
 ジュゼッピーナが校舎裏に到着した時には、既に銀麗が優しい微笑みをたずさえて待っていた。
 銀麗に校舎裏に呼び出されたジュゼッピーナは、何の用件で呼び出されているのかは想像はついていた。しかしそれが本当かどうなのか、実際に銀麗の口から言われるまでは不安が顔を覗かせているのも事実。
 ジュゼッピーナの小さな不安は次の銀麗の言葉で、綺麗に打ち消された。
「以前、約束したとおり。今のピナコならこれを受け取っても大丈夫だと思うから」
「はい、お受けしますの、お姉様」
 銀麗がポケットから赤いバラのロザリオを取り出す。
 今ならその意味に応えられる自信がある現れからか、神妙な表情で返事をするジュゼッピーナ。
「そう、なら……」
 ジュゼッピーナの返事に小さく頷く銀麗の言葉は最後まで続かなかった。銀麗の言葉を後押しするようにジュゼッピーナは自ら、ロザリオが掛けやすいように頭を下げていた。
 そんなジュゼッピーナの様子に銀麗が小さく困ったよな笑みを浮かべたのが、雰囲気から何となく分かった。それが拙速を好まない銀麗がどう捉えるか一瞬不安になってしまう。

 その不安はあっという間に違うものに塗り替えられる。

 無言なれども凛とした空気を身に纏う銀麗。
 一時ならこの世界さえも統べる事が出来てしまうかもしれないと思わせる雰囲気。実際ジュゼッピーナのこの瞬間を統べて、誇るべき義姉。
 そんな銀麗の手によって、首に掛けられるロザリオの重み。
 冷たいはずのロザリオは、銀麗の手にあったからなのか、ジュゼッピーナの肌になじむように温かい。
「それじゃ、これからも頑張ってね」
「はい、がんばります」
 ジュゼッピーナが再び顔を上げた時には、そこには先ほどと変わらず優しい微笑みを浮かべている銀嶺の姿があった。
 それに元気よく返事をするジュゼッピーナの胸の上で、ロザリオが瞬いていた。




イラストレーター名:アルミ