●兄が遊びに来る…「帰れッ(怒)」
「さて、鳳駆は元気かな?」
予定が早く終わり、暇を持て余した阿修羅が取った行動とは、家出中の弟、鳳駆の様子見であった。ぴんぽーんとインターホンを鳴らして、さっそく家の扉を開けてもらう。
「やぁ、元気〜?」
「お前か……何しにき……」
怪訝な顔で迎える鳳駆の横をするりとよけて。
「………」
呼び止める間もなく、阿修羅はマイペースに部屋に入っていった。その手に妙な荷物も持って。
何かを諦め、先ほどまでしていた宿題に再び取り掛かる鳳駆。
ちなみに阿修羅の事は放っておくことにする。
阿修羅はごそごそと鳳駆の部屋に入って、さっそく物色。
あーでもないこーでもないと呟きながら、なにやら準備をしているようだ。
後ろで何かしているのか気になるが、宿題が最優先。
そう思いながら、鳳駆はかなり後ろ……いや、阿修羅の事を気にしているが、気にしないように勤めている。
「お〜い、クリスマスやろー、クリスマスっ♪」
「フン、くだらん……」
そう呟いたとき、鳳駆の目にあるはずのない物品を発見した。
ちゃぶ台に乗せられたツリーにケーキに……鳳駆のゲーム機。
「ほーら、楽しいよ、クリスマスー♪」
既にゲーム機は動いており、スタート画面がテレビに映し出されていた。
「帰れッ」
堪えきれず、鳳駆はそう怒ったのだが……。
ぴこぴこーん。ばきゅーん!
数分後。根負けした鳳駆は阿修羅のゲームに付き合っていた。
ケーキも不本意ながら食べた。美味いが不本意だ。
しかし……ここまで付き合っているというのに、兄の、阿修羅のゲームテクニックは大人気ない。
手加減なしの本気のバトル。鳳駆も負けじとがんばるが、残念ながら兄の腕には及ばない。
「やってられるかぁーッ」
がしゃーんとコントローラーを叩きつける鳳駆。幸いなことにコントローラーは無傷だ。いや、見えていないところで壊れているのかもしれないが、見た目は無事だ。たぶん。
「まあまあ、鳳駆もいいところいってるよ。もしかしたら、俺を追い越しちゃうかもね〜」
そんなフォローも鳳駆には通用しない。
「いい加減、帰れッ!」
そんな二人のクリスマスは、いつもと変わらない兄弟喧嘩で幕を下ろしたのであった。
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