木村・小夜 & 鹿取・隼人

●このまま時間を止めて

「あ、あの、隼人先輩、パーティー、楽しかった、ですね」
「ああ、楽しかったな小夜ちゃん」
 楽しかった仮装パーティーも終わり、小夜と隼人は家に向かっていた。
 クリスマス一緒に染まる街並み。
 煌びやかに飾られるショーウィンドウ。
 夜だというのに、胸が弾んでくるのは、今日がクリスマスだからだろうか。
 ゆっくりと歩いていく二人の前に、大きなクリスマスが見えてきた。
 下から照らされる灯りで、ライトアップされているツリーはとても綺麗に映って。
「わ、えと、綺麗、です……」
 ツリーと、それから傍にいる隼人を見つめながら、小夜はゆっくりと瞳を閉じた。
 その胸に、淡い期待を抱きながら……。

 ずっとどきどきしていた。
 傍にあなたがいる、それだけで。
 こうして、夜まで一緒にいられて。
 綺麗なツリーも一緒に見られて。
 でも……。
 なぜか、あなたが遠くに感じるのは、気のせい?
 ううん、きっと気のせい。
 気のせいだから……。

 隼人はそっと、その手を伸ばした。瞳を閉じる小夜の肩を抱き寄せようと思っていた。
 けれど、その手は途中で止まってしまう。
(「ごめんな、小夜ちゃん」)
 小夜の前髪をその手で上げて、そっと額に唇を重ねる。

 ちくり。
 どうして、胸が苦しいんだろう。
 額にくれた、素敵なプレゼント。なのに……胸が苦しいのは、恋人とみてくれなかったから?
 それでも……。

(「……お願い、時間を止めて……」)
 そう願わずにはいられない。
 その時間はほんの僅かでもいい。それだけでもいいから……。

 雪の舞う公園で、小夜は瞳を閉じながら、隼人の温もりを感じながらそう願うのであった。




イラストレーター名:カザミネマユキ