芦夜・恋月 & 御鏡・更紗

●白き世界、この世界を守ると誓って

 静かな夜。
 屋上では一人の幼い少女が佇んでいた。
 屋上から見える町並みが温かく見えるのは、雪が降っているからだろうか?

「隣、いい?」
 そういって、更紗の隣にやってきたのは、恋月。
「街、見てたんだ」
「はい。これが私たちが守ってきた場所。これからも、守るところ……」
 呟くように、はるか遠くを見るように。
 そんな愛おしげな表情を浮かべる更紗に、恋月は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「こうしたら、よく見える?」
「え? ああっ」
 恋月は、ひょいっと更紗を抱き上げた。
 更紗の目線から見えなかったものが見えてくる。
「ありがとうございます、恋月さん……とっても、よく見えます」
「そう、よかったわ」
 恋月もまた、微笑んだ。

「ね。更紗ちゃん」
 しばらく共に眺めていた恋月が口を開いた。
「はい」
「……私はもうすぐ、卒業だ」
「……はい」
「卒業後、どうなるか判らない。もしかしたらみんなで騒げるのも最後かもしれない。……だからって訳じゃないけどさ。……弁当屋のみんなのこと、お願いね」
「恋月さん……」
「……みんないい子だよ。すごく、凄くね」
「……はい。それはわかります。けど……」
「これからは私のようなロートルじゃなくて、君ら若い世代の時間だ」
「それって……」
「……ん。遺言……かな?」
「や、やめてください、そういう風にいうのは……その、嫌です……」
 更紗の言葉に恋月は困ったように笑みを浮かべた。
「やだなぁ。悪い意味じゃないよ。……ただ、ね。んー。そうだね。私にとって、弁当屋のみんなは家族で……可愛い存在だ。もちろん、貴女を含めてね」
「それでも……遺言だなんて、縁起悪いですっ」
「ごめん」
 一言告げて、もう一度恋月は口を開いた。
「でも……よろしく、ね」
 いろいろな意味を込めた言葉が、更紗の耳に届いた。

 しばらくして、恋月は更紗をパーティー会場へ行くように促した。
 寒い風は体に毒だからと。
 更紗も充分、屋上の景色を楽しんだらしく、恋月の言葉に素直に応じる。
「あっと、忘れるところだった。ちょっと待ってくれる?」
 更紗はくるりと振り返り、恋月の顔を見る。
「……貴女と知り合えて良かった。私の結社に来てくれて、ありがとう」
 その言葉に更紗は、その日一番の笑顔を見せたのであった。




イラストレーター名:羅亞羅