●Engagement〜想いを告げて〜
とても楽しかったクリスマスパーティは終わってしまった。
その余韻を楽しむように、暗くなった学校内をいく斗輝と沙羅。
こっそりと忍び込んだのは使われ居ない空き教室。
差し込むのは月明かりのみ。
電気をつけてもよかったけれども、そのままの方がなんとなく落ち着けたから、月明かりの下寄り添う二人。
「ドレス……似合ってるよ」
ドレスも似合っているけれども、それはしっかりと沙羅に伝えたい言葉じゃない。
しっかりと伝えないといけないと思いながら、きっかけがつかめず言葉を選んでしまう。斗輝は自分の左手薬指を眺める。以前は中指にしていた、誕生日に沙羅から貰った指輪。中指から薬指へと変えた気持ち。
パーティの時に、わざとプレゼントを渡さなかった。
二人きりの静かな場所で伝えたかった。
斗輝は沙羅の肩をそっと抱いた。
気持ちが大きくて緊張してしまう。暗くてよく分からないけど、きっと赤くなっているはず。
心を決める。
「これからもずっと、大人になっても、俺とずっと一緒にいて欲しい」
小さな上品な小箱を沙羅に差し出す斗輝。
差し出された小箱に、きょとんとした表情を浮かべたのは一瞬。肩を抱かれ、斗輝の緊張が伝わってくるせいか、沙羅も若干緊張して斗輝を見つめる。
「僕は、ずーっとずっと、春の為に在りたいのですよ」
恥じらいながらも嬉しそうな笑顔を返す沙羅。
沙羅の言葉を聞いて、斗輝は肩だけでなく彼女の全身を抱きしめる。
ぎゅっとぎゅっと力を込めて、心込めて。
エメラルドが嵌め込められたシルバーリングを斗輝が小箱から取り出す。
頬をほんのりと赤くした沙羅が、斗輝に手を差し出し指輪を嵌めて貰う。
沙羅の華奢な指にはまった指輪。嬉しそうに指輪を見つめる沙羅の視線は自然と斗輝に向いた。
彼女の体を、今度は優しく抱き寄せて口づけを落とす。
このままいつまでもこうしていられるように、深く長く。
この想いと絆が、時の果てまでも続くことを願って。
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