●〜Present for〜
洋館の屋根裏部屋で、二人だけのクリスマスパーティーをする柳霞と耶神。
小さな窓の外には、チラチラと小雪が舞っている。
一年前のクリスマスも一緒にクリスマスパーティーに参加して過ごしたけれども、今年と去年は違っていた。
今年は恋人同士としての、初めてのクリスマスパーティー。
少しのお菓子とケーキ。そうして飲み物を用意した屋根裏部屋は二人だけの空間。
「……来年もよろしく」
「それって年越しの挨拶みたい」
プレゼントを差し出しながらの耶神の挨拶に、思わず笑ってしまう柳霞も、彼女にプレゼントを差し出す。
耶神が貰ったプレゼントの中身はシルク製の虹色のネクタイ。
柳霞が貰ったプレゼントの中身はブルームーンストーンのネックレス。
その後は、静かな時間が流れていく。
耶神が言葉数が少ないのはいつものことで、良く分かっていることだけれども、もっと別の言葉が聞きたいと素直に思う柳霞。
だから少しだけ思案した柳霞は、少しだけ身を乗り出して貰ったネックレスを耶神の方に差し出してみる。
「つけてください」
貰ったネックレスを彼につけてくれとせがむ。耶神は黙ってネックレスを受け取ると、柳霞の首に掛けてやる。
「これどうやってつけるんだ?」
耶神につけてもらったネックレスを嬉しそうに見つめていた柳霞に、耶神の言葉が耳に入った。視線をそちらに向けてみると、ネクタイ片手に不思議そうにしている耶神の姿目に入った。
「仕方がないですね」
笑って柳霞が耶神からネクタイを受け取り、ネクタイを結ぶ。
その最後は黄金の月の形をしたタイピンを留める。
薄明かりの中、黄金の月にはめ込まれているルビーが緩く光る。
出来上がったものをまじまじと見つめる耶神の視線が柳霞へと移ると、無言で彼女の頭をくしゃくしゃと撫でる。
彼は彼で、口には出さないもののちゃんと柳霞の事を大切に思っているのだ。
それは柳霞も分かってはいるのだけれども、たまには言葉で欲したくなるときもあったりする。
小さな窓の外の雪は変わらずちらついていた。
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