櫻田・優 & 小金井・馨

●『可愛いv』『…恥ずかしい奴め』

 パーティーの買い物に来た優と馨。
 二人は一つのマフラーを共有しながら、街を歩いていた。
「あ、あのさ、パーティー楽しみだなっ!」
 話題を変えるかのように優は話し出す。
 実はマフラーを共有したり、カップルがするラブラブな事が、優にはどれも恥ずかしく感じるのだ。
 でも今は、隣に馨がいる。
「うん。優とのパーティーが楽しみだね」
 さらりとそんなことを言われて、優はどきまぎしてしまう。
「そういえばさ! 何で今日、女の格好か分かるー?」
 普段はこんな格好はしない。
 けれど、女の格好をしたその理由は。
「それは馨チャンのためよーん♪ キャハ!」
 本当のことだけど、照れるので冗談めかして、優はそう答えた。
「とっくに誘惑されてる。凄く似合ってて可愛いよ」
 けれど、馨は真面目に告げた。
「△□%$#!!」
 恥ずかしい、照れる! そんな思いが優の中に一気に噴出した。
 真っ赤になって、照れ隠しにチョップが炸裂。
 馨は何をされても微笑んだまま。
「もうッ! マジで返すなよ! しかも道端で!」
 優はそう文句をつけて、ぷいっと顔をそらした。

 と、二人の間に冷たい風が吹く。
 確か予報では、雪が降るほど寒いと出ていたような気がする。
「ぎゃー! さーむーいー!」
 優はいまさらながら、手袋を家に忘れてきたことを思い出した。
 思い出さなくてもいいときに思い出してしまうなんて。
 そう気づくともう、寒くてたまらなくなる。
「じゃあ、手を繋ごうか」
「!!」
 馨は手を繋ぎ、そのまま自分のポケットの中に二人の手を入れた。
 優は照れてまたチョップをしたくなる手を、必死に堪えている。
(「まぁクリスマスだし……今日ぐらい我慢してやる……!」)
 そう思って、耐えていた。
「は……恥ずかしい奴だな……まったくもう……!」
 文句はやっぱり欠かさずに。
(「でも手の温度を感じて、一緒に居られて良かったなぁ」)
 そっぽを向く優は、手の温もりを感じながら、そう思っていた。

 恥ずかしがる優を、馨は幸せそうな笑顔で見つめていた。
(「可愛いなぁ」)
 きっとこういうと、恥ずかしがるのは目に見えているので、心の中で呟くことにした。
(「どうか、この幸せがずっと続きますように」)
 そう祈りながら、幸せなひと時をかみ締めていた。




イラストレーター名:あららぎ風矢