●雪の降る夜に
雪が降りしきる公園。
そこで、雅瑚は雪だるまを作っていた。
ごろごろと、二つの雪玉を転がして、乗せて行く。
腕に当たる部分に小さな小枝を差し込んで、顔にも目や鼻、口を描いて。
その都度、きらりと輝くものがあった。
雅瑚の右手の小指にはめられた、ピンキーリング。
これは、織己から貰ったものであった。
織己はずっと雅瑚の事を見つめていた。
そして、その小指にはめられたものが何かをも知った。
(「最近、雅瑚さんと会えてない」)
しかも恋人らしいことも、あまりしていない。
いつも雅瑚任せで……もしかしたら、飽きられたかもしれない。
ふと、織己の心に不安がよぎる。
彼の左腕には、雅瑚から誕生日にもらった銀のブレスレットが付けられていた。
三日月と羽根がついた、大切なプレゼント。
織己はそのブレスレットを握り、雅瑚の後ろに立つ。
最後に小さな帽子を乗せて、小さな雪だるまが完成した。
「どう? なかなか良い出来栄えだと……」
振り返ろうとする雅瑚を後ろから、織己が抱きしめる。
「怖いです……いつか、貴女が離れてしまいそうで」
真っ赤になりながら、織己はそう告げたのだ。
「心配しないで……」
織己からは見えないが、微笑むような雅瑚の声が聞こえる。
「むしろそれは、私のセリフなのよ?」
抱きしめる腕の力が強くなる。
「こ、こっち見ないでくださいね! 今、オレ……超カッコ悪いくらい、顔赤いですから……」
「そ、それは私もだから。……えへへ、しばらくこのままでいましょうか」
腕の中で感じる温もり。
背中越しに感じる温もり。
そして、二人の熱い頬。
今、二人の顔を見られるのは、目の前にある小さな雪だるまのみ。
雪はまだ降り続ける。
静かにそれは、ゆっくりと二人と雪だるまの上に降り注いだ。
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