●−Cait Sith&Cu Sith−
ダンスが終わった後、司姫と櫻は結社の2階のテラスに出てきた。
聖なる今宵はちょうど満月。空には白く丸い月が浮かんでいる。
紺のタキシード姿の司姫と、薄紫のイブニングドレスに司姫から貰ったムーンストーンの首飾りをつけている櫻。二人は、踊っていたときの格好のまま。
櫻は黙って綺麗な月を見上げていた。そんな櫻の姿を見つめていた司姫は、ふと不安な気持ちを感じていた。
自分でも知らないうちに、司姫はそっと櫻を後ろから抱きしめる。
月を眺めているだけの櫻だったが、司姫にはまるで妖精やかぐや姫のように見えて、「このままどこかへ飛んでいってしまうのではないか」と、不安になってしまったのだ。
抱きしめた彼女の感触が伝わってくる。
共にいられるという事を強く感じとても嬉しく感じる。
過去に大事な友人を亡くしている事で、また「大切な人を失う事」をひどく恐れている事も分かっているけれど……。
「何処にも行かない下さい…櫻さん」
「……大丈夫なのです……私の居場所は、貴方の隣にしか無いですから……」
櫻の体を抱きしめたまま、彼女の耳元で告げる言葉。抱きしめられること少し戸惑うけれどもそのまま受け入れている櫻が頷く。
今、こうして居られることに感謝し、櫻は自分を抱く司姫の腕に自分の腕を添わし、彼を安心させるように優しく囁いた。
司姫にとってそれはとても嬉しい言葉なのだけれども、その分なんだか恥ずかしくなってきて顔が熱いのが分かる。
きっと今振り返られれば真っ赤な顔をいいてるかもしれない。
多分それは今までないほどに。
「……振り向かないで下さいね?……今の俺、格好悪いから……」
再び櫻の耳元で司姫が囁いた。その言葉に櫻はだまって頷く。
白い満月が浮かぶ夜に、白い妖精が舞い踊る。
白い妖精はすぐに溶けて消えてしまうけれども、二人に祝福を贈るよう。
――メリークリスマス。
| |