近衛・華琥 & 野口・すぐり

●すぐりん路上ライブinクリスマス

 クリスマスの学園内。
 和やかに流れていく時間の中、響き渡ったのは元気の良い歌声。
 行きかっていた生徒たちの足取りが自然と止まり、歌い始めたすぐりに視線が集まる。
 小さな広場で場所で突然始まったすぐりの路上ライブ。
 そう、これはあの有名なすぐりん路上ライブinクリスマス。
 すぐりの歌声が、クリスマスの空に響いていく
 可愛らしい衣装に身を包んだすぐりのライブが続けられていく。
 その様子をそっと見守るのは敏腕プロデューサーでありマネージャー(自称)の華琥。
 華琥がプロデュースしたのなら、このライブもきっと大成功するだろう。
「すぐりんの魅力と、私の力でこれも大成功ねー」
 すぐりの歌う様子を見て、何か納得するように華琥が眼鏡を掛けなおす。
 けれどもそれは自分ひとりの力ではなくて、すぐりの魅力とライブに掛ける情熱があってこその成功。
 大きな笑みで歌うすぐりの姿を見つめては、また小さく頷く華琥。

 ………だがしかし。

 これはすぐりがとある依頼で華琥に借りを作ってしまった結果。借りを返すために路上ライブという名の羞恥プレイとなった。
 しかも断れない、深い事情付。
 にこやかな笑顔を振りまき、路上ライブをとても楽しんでいるように見えるすぐり。
 自分の事を見守っている華琥を盗み見ては、心の中で大きく『あっかんべー』をする。と、目が合ってしまったりして、慌てて視線を自分をみている客にもどすすぐり。
 その反対に落ち着きはらった華琥。
 もしかしたらすぐりの心の中のことまでお見通しなのかもしれない。

 ロマンチックに小雪が降り始める。
 心の中で悪態をつきながらもすぐりんの伸びやかな声が、聖夜の広場を満たしていった。




イラストレーター名:くらりん