歌彩・真矢 & ヴェスティア・ヴァンハイト

●ding-dong

 真矢とヴェスティアの二人は、寄り添って歩いていた。
 真矢はそっと、ヴェスティアの方を見る。
 長い青色の髪が、風に揺られ、ヴェスティアはそっと髪を押さえた。
 ヴェスティアの口元に笑みが浮かぶ。
 それを見て、思わず真矢は瞳を細めた。
 何気ない仕草が、こんなにも胸の鼓動を早めるのか。
「真矢様?」
「あ、いや……なんでもない」
 ヴェスティアの顔をずっと見ていたのを、気づかれただろうか?
「もうすぐですわね」
「ああ……」
 どうやら、気づいていないようだ。
 真矢はほっとした面持ちで、前を見る。
 もうすぐ、彼らの目指す場所が見えてくる。

 気がつけば、澄んだ青空は、黄昏色に染まっていた。
 ふと、鳩が飛び立つ音が聞こえてきた。
 それと同時に響き渡るのは。
 教会の鐘。
 厳かに響くその音は二人の耳にも届く。
 いや、この周囲一帯に響き渡るほどの大きな音。
 なのに、こんなにも優しげに感じるのは、気のせいだろうか?
 もしかしたら、自分の他にも大切な者と共に聞いているから?

 鐘の音と共に雪が舞う教会。
 二人はその教会の上にある鐘を見上げていた。
「綺麗な音色ですわね」
 幸せそうにそう呟くのは、ヴェスティア。
「そうだな……」
 真矢は頷き、隣を見る。
 優しげに微笑むヴェスティアの顔を見ていると、自分も自然に笑みがこぼれて行く。
「こうしていると寒くないな……」
 真矢はヴェスティアをそっと抱き寄せる。
 互いが感じる暖かい温もり。
「ずっと……一緒だからな?」
「真矢様……」
 ヴェスティアはとびきりの笑顔で続ける。
「メリークリスマス、真矢様。……来年も、再来年も……ずっとこうしていましょうね?」
 その言葉に真矢は静かに頷いて見せるのであった。




イラストレーター名:カザミネマユキ