●〜聖夜の恋人たち〜
「せっかくのお祭りですもの、楽しみましょうよ、ね♪」
そう言って、森羅を誘った菊乃。
向かった先はカップルやそれを妨害する人たちでにぎわう一角。
そこには友人も参加していた。友人たちはカップルをヤドリギの下へとたどり着かせないようにする、妨害組に参加していた。妨害組の友人たちからの愉快な妨害に合えばピコピコハンマーで反撃したりする。
そんなことが楽しくて、思いっきりはしゃいでしまう。
そうして目指すのはツリーのヤドリギ。
そんな大騒ぎの後の後の小さな小さな、それでも当人たちには大きな出来事。
大騒ぎも一段落した頃。
「あー、楽しかった。誘ってくれて感謝ですよ」
森羅が笑顔で今日誘ってくれたお礼を菊乃に伝えると、菊乃もそれで笑顔で返した、その瞬間。彼の口調が変わりトーンが落ち、それが真剣なものだという事がすぐに分かった。
「えっと、ココが境界線。……これ以上の進展を望むんなら、色々苦労を掛ける事になると思う。それでもいいなら、菊乃嬢の笑顔を下さい、代わりに、多分今菊乃嬢が望んでるものを、あげます」
森羅の言葉は真剣ながらも、若干照れているのがその表情や、少し赤くなった頬から見て取れた。
森羅の真摯な言葉を受け、菊乃は言葉の変わりに極上の笑顔を森羅に返す。
その笑顔に誘われて、森羅は彼女の体を愛しく抱きしめる。それに菊乃も彼の背に腕を回して応える。
ぎゅっと抱きしめ合えば、もの凄く満たされてくるものを感じる。
近い菊乃の笑顔がとても愛しく思う。
近い森羅の照れたような表情も好きだと思う。
「お二人とも、幸せになるのじゃよ」
さっきまで妨害していた友人たちが祝福の声を高らかに上げる
そんな中、二人は愛しげに相手の顔を見つめ合い、そのまま唇を重ねる。
近くなったのは距離だけではなく、何かもっと別のものが近づいた感じ。
自分を抱くこの腕が、その人が、全てが愛しくてしかたない。
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