蓮井坂・詩織 & 涼城・紗夜

●お月さまが照らしてくれた秘密

 その場所を見つけたのは偶然だった。
 いつもとは違う道を通ったときに見つけた公園。その公園に置かれた大きなツリーが置かれていたのだ。しかも、人気もなく、二人で過ごすには絶好の場所でもある。
「いい場所が見つかって良かったね」
「ん……」
 二人はそのまま、飾られたツリーの方へと歩き出した。

「……手、繋いでもいい?」
 詩織はそっと紗夜に尋ねた。
 紗夜は、詩織にとって特別な親友であった。いや、親友という言葉で言い表せるかどうか……そういった特別な感情を紗夜に抱いていたのだ。
 だからこそ、クリスマスを一緒に過ごしたいと思い、詩織から提案した。こうして共に過ごす事ができたのが詩織にとって嬉しいことでもある。
 だが……近づきたいのに近づけない。
 親友という今の関係を壊したくないという気持ちと、普段は奥手な詩織。その所為か思い切った行動はできず、その思いは自分の胸の中に秘めたまま。
 でも、特別な日……クリスマスならばと、詩織は少し積極的に出てみたのだ。
 断られたらどうしようと、内心ドキドキしながら……。

「うん、もちろんだよ」
 紗夜の方から手を握って、満面の笑みを浮かべた。
 その行為に詩織は驚くほど嬉しくて、最後には頬を染めながら嬉しそうに微笑んだ。

 実は紗夜も詩織のことをとても良く思っていた。
 そして、今日、こうして一緒にクリスマスを過ごせる事が嬉しい様子。
 また、詩織が言うことなら、たいていの事なら拒否することも無かったようだ。
 とはいっても、そんな事、当の詩織には分からないことなのだが。

「あ! 見て、詩織。綺麗だね……」
「ああ……とても綺麗だ……」
 二人が見上げるそこには、澄み切った夜空に、美しく輝く月が浮かんでいた。
(「……ずっと一緒にいられますように」)
 どちらからともなく、ぎゅっと手を握り返して、美しい月に願うのであった。




イラストレーター名:山岡鰆