日下・灯一郎 & 月読・小唄

●月灯りの聖夜

 軽く飾り付けられた教会。
 そこに灯一郎と小唄の二人はいた。
 灯一郎が用意した暖かいココアを手に、二人は窓の外を眺めた。
 どうやら、雪が降り始めたようだ。
 ゆらゆらと、白い雪が降ってくる。

「思えば……月読さんは初めて出逢った頃から、少しずつ、変わってきた気がするな」
 窓の外の雪を眺めながら、灯一郎は話し出した。
 出会ったときは、そうまるで本物の人形のように表情がわからなかった。けれど今は……。
「変わった……です?」
 ちょこんと首を傾げる小唄に。
「うん、何処がかは言えないけど……雰囲気が、ね」
 小唄の返事に、灯一郎は自分のことのように嬉しそうに微笑んだ。
 少し考えた後、小唄はゆっくりと口を開いた。
「お友達、できた、です。それから、仲良くして、くれる人、も」
 だからこそ、変われただと、小唄はその瞳で告げた。
「友達かあ……。うん。大切に、ね」
 灯一郎の言葉にこくこくと頷きながら。
「それから」
 小唄は続ける。
「灯一郎先輩にも会えた、です」
 そういって、小唄はほんのりと微笑んだ。とても嬉しそうに。
「え? 僕?」
 突然、自分の名前が出てきて、一瞬きょとんとするものの、すぐに灯一郎は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「それは……そう言って貰えるのは、とても嬉しいな」

 去年は予定のなかったクリスマス。
 でも、今年は違う。
 こうして、穏やかに教会で過ごせるのが、小唄にとっての幸せ。

 外ではまだ雪がしんしんと降っている。
 雪を眺めながら、小唄はそっと願った。
 出会いの幸福に感謝を。
 そしてこの幸せが、ずっと続きます様に、と。




イラストレーター名:華谷百花