桂・馬太郎 & 飛葉・彰吾

●こっこれは普通のデザートや!Xmasケーキやない!

 クリスマスがなんだ。別にたいしたことないやん。
 ただどっかの偉い人が生まれた日なだやん。
 別にひがんでいるわけでもないし、寂しがっているわけでもないと、自分に言い聞かせる馬太郎。
 丁度そんな昼時、馬太郎の元を訪れたのはお勧めDVDを持った彰吾。
 クリスマスなんて関係なしに、ゲームをやったりDVDを見たりまったり過ごす。
 高かったお日様もいつの間にか沈み行く頃、馬太郎特製鍋の夕食をはじめる。
 エビや蟹まで入った豪華鍋。
「シメは雑炊やろ」
「いや、うどんだ」
 それまで仲良く鍋を食べていたのだが、最後のシメは何にするかで勃発した熱い討論会。
 お互いにどっちがいかに美味しいかなんて言い合う。
 もちろんどっちかに決着がつくことはない。
 しかも相手の話を聞いていれば、相手の勧めるものも美味しそうに感じてしまう。
 それなら両方作ればいいじゃないかと、最初にうどんをしてから残った出汁で雑炊をすることにする。エビや蟹の出汁が良く出ていて、両方ともぺろりと美味しく食べれた。
 そんな後に馬太郎が、デザートとして持ってきたのはブッシュドノエル。
「Xmas関係ないんじゃなかったか」
「こっこれは普通のデザートや! Xmasケーキやない!」
 からかう彰吾に顔を真っ赤にして言い返す馬太郎。

 ケーキを食べ始めるとそこに流れるのは、静かな時間。さっきまでの騒々しさがウソのように静かになった。
「俺だけ他所の子になったみたいで寂しかったん」
「……迎えてくれる家族がいるなら帰りゃいいだろ」
 ぼそりと呟く馬太郎に返す彰吾。
 今までは普通の家庭で、親兄弟と一緒にいたのに学園に来てからは一人暮らしの馬太郎。ほんのりホームシック。
 一人の寂しさをかみ締めていたときに、彰吾が来てくれて本当に嬉しかった。
 そんな彰吾は馬太郎とは逆に、温かい家庭とは縁遠いところで過ごしてきて、しかもこんなアットホームなクリスマスも、自分になついてくる友人も初めて。
 表には出てないかもしれないが、本当は色々戸惑ってたりもする。
「ショーちゃんがおってくれて良かった」
「ま、ここなら無料飯が食えるしな」
 彰吾の心の中を知ってか知らずか、無邪気にケーキをかぶりつき笑顔を向ける馬太郎。そんな馬太郎を一瞥した後、彰吾はフォークを加えながら罰が悪そうにそっぽを向く。
 馬太郎が自分のために、家族が待っている実家に帰らずにここに残っている事を薄々は分かっていたりするのだけれども。
 こんな時、どういって言いかわからないから一緒にケーキを食べて誤魔化した。




イラストレーター名:如月 姫人