●マッハ100で駆けるサンタ〜金は国が出してくれる〜
楽しいクリスマスがやってきた。どこもかしこも浮き足立っている。
ターキーではなくチキンに、シュトレンではなく、イチゴののったデコレーションケーキ。色んな国の良いところ取りをした、日本独特のありがちのクリスマスを皆が過ごすとは限らない。
「わたしの親愛なる御主人様である紫翠様、Xマスですよ」
「ああ、そうですね、我が忠実なるパートナーであるところの駆龍奈」
「紫翠様、銀誓館に入ってからは初めて二人で過ごすXマスですし、何かしましょうよ」
「ええ、いいですよ。しかしただXマスパーティをするだけというのもつまらないですね」
説明しよう。
駆龍奈は昔事故で家族を喪い、天涯孤独だったところを高天守家に拾われ、それ以来紫翠に付き従っている。
そんな二人が学園で過ごす初めてのクリスマス。
紫翠は常識をわきまえているが故に、常識に囚われることを嫌がるきらいがある。
思惑ありげに紫翠が少し考え込んだ。
「といいますと?」
「私達でサンタになって街中に夢とか希望みたいなモノを振りまきましょう! ここに買い付けた人力車があります。これを飾りつけサンタのソリにします」
「はーい! 分かりました!」
「さあ、あとは二人でサンタになりましょう。これを着てください。渋谷で買って来ました」
「はーい! 了解です」
説明しよう。
人力車を出してきた二人は、クリスマスカラーに塗り立てた。
赤と緑、目にも鮮やかな和風なソリが出来上がった。
さらにそれだけでは飽きたらず、電飾やモールで飾り立てた。
そうして取り出したのは今日のための衣装。後はコレに着替えるだけ。
着替えた結果紫翠は赤マントを着けたサンタ姿。
駆龍奈は全身タイツのトナカイ姿。
「紫翠様、これは……?」
「私がサンタで貴方がトナカイです。私の旅路を任せられるのは貴方だけですから」
「はいっ♪」
説明しよう。
恋は盲目なのだ。
そして彼女はパワーキャラである。
「盗んだ人力車で走り出します!」
盗んではいないが、人力車を勢いよく引っ張り出していく駆龍奈。
そうして紫翠達は子供銀行製の貨幣を盛大に撒き散らす。
一台の妙な人力車が、夜の街を駆け抜けた。
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