鏡・翔一 & 空乃・詩漣

●星と雪のワルツ

 クリスマスパーティーももうすぐ終わり。
 キャンドルに灯された明かりを背景にして、今宵、最後のダンスが始まる。
 小さな楽団による演奏が、心地よい。

「Shall we dance?」
 スーツ姿の翔一はすっと、詩漣へと手を差し伸べた。
「Yes、Let's」
 淡く微笑み、詩漣は差し出された手に自分の手を重ねる。
 ゆっくりと踏み出し、踊るカップル達のいるホールへと向かっていく。
 優雅に詩漣の青いドレスが揺れる。
 側に居る翔一は、踊る詩漣と共にラストダンスを楽しんでいた。
 黄昏時の、淡い光に包まれたこの光景は、ここにいる者全てに感動を与えていた。
 もちろん、踊る翔一と詩漣の心の中にも、しっかりと。

 去年の今頃は一人だった。
 少しは寂しく感じたが、今は違う。
 目の前には、愛しい詩漣がいて、こんなにも幸せな自分がいて。
 気づけば翔一は、ずっと詩漣を見つめていた。
 眩しそうにその瞳を細めて。

「あっ!」
 小鳥のように舞っていた詩漣が何かに躓き、よろめいた。
「詩漣さん!」
 それを慌てて抱きとめる翔一。
「翔一さん、愛してますわよ」
「え?」
 そう、にこっと微笑む詩漣の様子に、これがちょっとした詩漣の悪戯だと気づいた。
 安心したやら、愛おしいやら、ちょっと複雑な想い……けれど、それらの気持ちよりも幸せな想いの方が上であった。
 そんな翔一に素敵なプレゼントが舞い込んできた。
「翔一さん」
 詩漣は翔一の頬にそっと口付けしたのだ。
 頬に触れるその感覚が、去年の自分にしてみれば、まるで夢のようで。
 夢のようだけれども、しっかりと目の前にある愛しい人の存在を、翔一は優しく抱き寄せた。
(「願わくば、来年も再来年も、ずっと一緒にいられますように……」)
 大切な人の温もりを感じながら、そう翔一は願うのであった。




イラストレーター名:あず