●2人のクリスマス07'〜ツリーの下で〜
賑やかな雑踏の中、二人は辺りを見回した。
幸せそうなカップル達に、楽しげに歩いていく家族連れ。
そして、待っている人がいるのか、時計を気にしながら、走っていく者も。
「クリスマスは夜も賑やかなのにゃね」
初めての夜のおでかけ。
莉那は、そわそわと辺りを眺めながら歩いている。
初めてだからだけではない。
十太と一緒にいられる……それが嬉しくてそわそわしてしまうのだ。
「人が多くて、はぐれちまいそうだなぁ」
十太は思わず呟く。人というよりカップルが、と付け加えた方がいいかもしれない。
「えっとほら、はぐれないように……手ぇつなごうぜ」
そういって、十太は莉那の手を取った。
莉那は嬉しそうににっこりと微笑む。
「にゅ、十太くんの手……大きくて温かいにゃ」
その笑顔に照れながら、十太はクリスマスツリーのある場所へと案内していくのであった。
(「クリスマスの夜は、とっても寒いにゃけど、心はぽかぽかほっこりなのにゃ」)
ふと、莉那の視線の先に大きなクリスマスツリーが映った。
「キレイだなぁ」
「はいですにゃ。お昼に見るのも素敵にゃけど、夜はキラキラきれいですにゃね……お星さまがたくさん降ってきたみたいにゃ」
二人は顔を見合わせ、微笑んだ。
「お願い事も叶いそうな気がしますにゃね」
そう付け加える莉那の言葉にそうだなと、頷く十太。
と、ふわりと白い何かが落ちてきた。
雪だ。
「星じゃなくて、雪が降ってきましたにゃ」
腕を高く伸ばして、雪を掴もうとしている。そして、莉那の小さな手に小さな雪が落ちてきた。
それはすぐに消えてしまったが、莉那は雪を手にとれたことに喜んでいる。
「ああ、ホワイトクリスマス……だな」
十太は瞳を細めて、莉那を見つめた。
黒髪に白い肌。それがツリーのイルミネーションに照らされて、十太の目を通さなくても、充分綺麗に見えた。いつしか、見つめていたのは、十太だけではなかったようだ。
莉那もまた、見つめ返していた。
「十太くん、メリークリスマスにゃ」
「ん、メリークリスマス、莉那ちゃん」
その後、莉那はぎゅっと、十太に抱きついた。
雪が降るツリーの前。
二人は同じようなことを願っていた。
(「来年も一緒に、いられるといいなぁ……」)
(「来年も再来年もずっとずっと一緒に過ごせますように……」)
二人は抱きしめあいながら、胸に秘めた願いを輝くツリーの星に託すのであった。
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