●もう少しこのままで……
ちらちらと雪が降っている。
淡い雪は辺りを白く彩っていく。
「雪かぁ。ホワイトクリスマスだねぇ」
「ええ、そうですね」
未玲は空を見上げながら、雪を手に取る。隣にいた霧亜も頷き、共に空を見上げていた。
お互い、タキシードにドレスと、少し肌寒い服装だが、ダンスで火照った体には今の寒さが程よく感じられる。
「今日は楽しかったねぇ。こんな日が続くといいのに」
楽しいパーティーもそろそろ終盤に差し掛かる。
名残惜しそうに呟く未玲を、霧亜は包み込むように抱きしめた。
「……大丈夫ですよ。今日が終わっても、明日はもっと楽しいですから」
そう言うものの、自分でも恥ずかしいのか頬を赤く染めていた。
「そこで恥ずかしがらずに、しっかりキメてくれたら、もっと格好よかったのに」
照れ隠しにからかうような口調で言う未玲。
それでも嬉しさは隠しようもなく、頬はどうしても赤くなる。
「普段は、あんまりこんなことしないけどさ……今日くらいはいいよね?」
未玲は霧亜の胸に手を添えて、霧亜の顔を見つめる。
(「今日、こんなときくらいじゃないと、恥ずかしくてできないから……」)
頬を染めながら、未玲はそう思っていた。
「そうですね。いつもなら恥ずかしいですけど、今日くらいなら」
霧亜の抱きしめる腕の力が僅かに強くなる。暖かな温もりが先ほどよりも強く感じられた。
互いの吐息、鼓動もまた、間近に感じられる。
「ちょっとずつ寒くなってきたましたね。そろそろ部屋に戻りましょうか?」
風邪をひいてはいけないと続ける霧亜。
それは、相手のことを思いやっての言葉でもある。
「もう少しこのままで……」
未玲は甘えるように続けた。
「暖かい部屋に入ったら、こんなこともできなくなっちゃうしね」
(「どうやら、すぐには中に戻れそうにないですね」)
心の中で、そう呟いて。彼女の言葉に応えるかのように、霧亜は未玲を抱き返した。
少し肌寒い夜。
二人にとっては、暖かくかけがえの無い時間でもあった。
想い出に残るホワイトクリスマスは、こうして、終わりを告げるのであった。
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