双海・青麗 & 寵姫・玉藻

●狐の仔等のくりすます

「メリー・クリスマス!」
 ぱーん! とクラッカーの音が響き、グラスを鳴らして乾杯する。
 今日はクリスマスイブ。
 だから部屋を飾り付けて、美味しいケーキと料理を並べて、2人だけのクリスマスパーティ。
 いっぱいお喋りして、いっぱい笑って。
 たくさんあった料理も美味しく食べて、後はケーキを残すだけ。
 でも、ケーキを食べる前に、1つ大切なイベントが残っている。

「じゃじゃーん♪」
 玉藻は、この日のために用意しておいたプレゼントボックスを取り出した。
 綺麗にラッピングされ、リボンがかけられたそれは、青麗へのプレゼントだ。
「はい、青麗に……メリークリスマスっ!」
「あ、ありがとう、ございます……」
 少しはにかんで、プレゼントを受け取る青麗。
 さ、開けてみて? と玉藻に勧められるまま、リボンを解いて、箱の蓋に手をかければ……。

 びよんびよよよよよん!

「……こ、これ……」
 ぶらんぶらんぶらん。
 勢いよく飛び出してきた、コミカルなピエロの顔がついたバネが、力なく垂れ下がる。
「わっ」と小さく声をあげた青麗は、少しだけ呆然としていたが……でも、それが、玉藻のイタズラだった事に思い至ると、急に「むむっ」とした顔になる。
「……」
「やだなぁ、ほんのちょっとした可愛いイタズラでしょ?」
 ぷいっと顔を背けた青麗に、玉藻は軽い口調で「ごめんねー」と言いながら、今度こそ本当のプレゼントを取り出す。
 さっきとよく似ていて、でもリボンの色だけ違う箱。
「はい、こっちが本当のプレゼントだよっ♪」
 そう差し出された箱を、青麗はちらっと見る。
「……今度は……本物?」
 訝るような視線になるのも、まあ仕方ない事かもしれない。だって、たった今騙されたばかりなのだから。
 でも、玉藻が屈託の無い笑顔で「うん」と大きく頷くのを見ると、今度は大丈夫そうだと、プレゼントを受け取る。
「……これ、僕から、も……」
 反対に、青麗から差し出される1つの箱。それは、青麗が玉藻に贈ろうと用意していたクリスマスプレゼントだ。
 玉藻は、嬉しそうに笑うと、その箱を受け取った。
「じゃ、お互いに開けてみよっか♪」
 二人は向かい合いながら、同時にリボンに手をかける。
 そして、そのまま箱を開けて……。

 プレゼントの中身を嬉しそうに眺めて、2人は互いに「ありがとう」を言い合う。
 そして、ケーキを切り分けて……まだまだ楽しいクリスマスパーティは続くのだった。




イラストレーター名:あにゅ