●でばがめーずにはケーキをつけて♪
「でばがめーず報告会ー!」
クラッカーの破裂音が響き、拍手の音が重なる。中央にケーキを囲んで、空のティーカップに温かな紅茶が注がれ、報告会の名を借りたパーティが始まる。
「まずは私から報告をさせて頂きましょう」
暖炉には炎が揺れる暖かな室内で、自称他称を問わない「でばがめーず」の面々は、一礼して報告を始めようとするメンバーに拍手で応じる。律儀に報告を始めるあたりは評価すべきだろうか?
「うーん、確かにあったかそうだよね」
「こたつに隠れるんですか……出れなくなりそうですよね」
語られる内容に舞夢が首をかしげれば更紗は相づちを打つ。ちなみに更紗愛用のみかん箱は流石に暖炉のある部屋では引火の恐れがあるので、残念ながら報告会の会場には持ち込まれていない、何となくトレードマークのような気もするダンボール箱だが。
「あ、更紗先輩」
事の起こりは舞夢が偶然更紗に再会したことから始まる。
「乾さん、どうしたんですか?」
「えっと、一緒にお茶しませんかっ……ほんとは報告会なんだけど」
朝に作ったクリスマスケーキが残っていることを思い出して、舞夢は更紗を一緒に「でばがめーず報告会」に参加しないかと誘ったのだ。
「更紗先輩、ケーキどーぞっ」
「ありがとうございます」
結果、二人は横に仲良く並んでソファーに座っている。
「ぶっ殺したい程盛況みたいですね」
最初に供した更紗と舞夢の手によるケーキは随分評判が良かったのか既に箱が残るのみで、二人の前に並ぶケーキはココアスポンジもチョコクリームも使っていないごく普通のショートケーキだ。その雪のように白いクリームの上からケーキスプーンの先を生地へと潜り込ませ、切り取ったケーキの先端を口元に運びながらふと更紗は天井を見上げる。
「え、次は私の番でしたか?」
甘いケーキの味を味わう内に順番が回ってきたようで。
「わぁー、楽しみにしてるよぉ」
パチパチと拍手を送る舞夢。
報告は進んで、メンバーが一通り報告を終えればパーティーはフリートークに移行する。「更紗先輩は今年の学園生活どうだったのかなっ?」とか「乾さんはどうでした?」と楽しげに言葉を交わす内、何時しか楽しい時間も過ぎ、報告会もお開きへのカウントダウンが始まる。残された時間の使い方はさまざまで、ケーキの味を噛みしめる人、時間ギリギリまで会話を楽しもうとする人、余ったケーキの確保に動く人など実に多様だった。
「でばがめーずもそうだけど、来年もよろしくね。更紗先輩♪」
「もちろんです」
そんな中、紅茶のカップを抱え満面の笑みを浮かべて舞夢が言えば、更紗は微笑みながら頷いた。でばがめーずに栄光あれ。
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