水鏡・澪音 & ジン・オーシャン

●【蒼紅】二人だけの幸せな時間

 クリスマスの日、ジンは澪音の部屋を訪れていた。
 理由は勿論、彼女と一緒に、2人だけのクリスマスを過ごすためだ。
「メリークリスマス、澪音」
「………メリークリスマスです」
 そっと隣の澪音の頭を撫でながら告げるジンに、澪音は笑みを浮かべて返す。
 今年は、色々な出来事があった。つい少し前にも、戦いが……辛い出来事が、あった。
 だけど、今このひとときは、そんな出来事も忘れて、2人だけで、この時間を楽しみたい。
 一緒に過ごす時間に、幸せを感じていたい……そう想っているのは、どちらも同じ。
 だから2人は和やかで、穏やかな時間を過ごす。
 緩やかに流れていく、2人だけの大切な時間を……。

「プレゼントが澪音だったら、もっと嬉しいんだけどな」
「わ、私が?」
 ふざけ半分のジンの言葉に、あたふたと赤くなる澪音。その様子に可愛いなぁと目尻を下げれば、「……ジンなら、いいですよ?」なんて切り替えされて、今度はジンが照れる番。
「じょ、冗談だって。……ああ、でも」
 そっと、ジンは澪音に触れる。
 もっと傍にいたい。……抱きしめていたい。
 言葉に言い表せないくらい、伝えたいことは沢山ある。だけど、今はただそっと、彼女の事を抱きしめていたいと、そう思う。
 だからジンは、ぎゅっと澪音を抱きしめる。
 そのまま、2人はしばらく抱き合って……ふと、不意に視線を交わして、それから。
 どちらからともなく目を閉じて、そっとキスを交わす。

「……これからも、ずっとよろしくな」
「さ……さすがに、恥ずかしいです」
 キスの後、じっと見つめるジンから澪音は思わず視線を逸らす。恥ずかしさのあまり真っ赤になりながら、空いた手で近くに置いてあったぬいぐるみを引き寄せると、ぽふっと顔をうずめる。
 そんな彼女の仕草が、とてもとてもとても可愛らしくて、ジンはくすくすと笑う。
 照れて恥ずかしそうにしている様子が、また最高なのだ。
 少なくとも、ジンにとっては、そう。
 だけど、あんまりいじめ過ぎないように。そう気をつけながら、ジンはそっと、また澪音に手を伸ばして……触れる。抱きしめる。

 あなたと一緒なら、2人で過ごす時間は、いつだって甘くて幸せ。
 今宵も2人だけの時間を楽しみましょう。
 だって、聖夜はまだ、始まったばかりなのだから……。




イラストレーター名:あにゅ