茨木・漱吹 & 藤野・明日香

●初めてのお揃いとクリスマス

 賑やかな町並みを、二人でゆっくりと歩いていく。
 何かを見つけ、明日香はふと足を止めた。
「時計だ……。漱吹、あの時計を売ってるお店に入ってい〜い?」
 首をかしげて、隣に居る漱吹に尋ねる。実は、明日香は時計が好きであった。
 だからこそ、二人で時計が見たいと思ったのだ。
 この特別な日に……。
 漱吹はくすりと微笑み。
「うん、いいよ。行こう行こう」
 無意識であろう、明日香の可愛い仕草と言葉遣いに、漱吹は密かに喜んでいた。
「やったー!! 時計時計〜」
「本当に嬉しそうだねー」
 嬉しそうに店に入り、さっそくショーウィンドウを覗き見する明日香。離れぬよう、その後を漱吹がついていく。明日香は腕時計や、壁にかけられた時計を眺めながら、くるりと漱吹を見た。
「ね、漱吹はアナログとデジタル、どっちが好き? 私はアナログ〜! 針がカチカチ動いてるのが好き〜♪」
「んー……僕はどっちかなぁ?」
 明日香に尋ねられ、漱吹は側にある時計を眺める。
「ウン、デザインによるかも! 懐中時計とかも結構好きかな♪」
 漱吹は笑顔でそう答えた。
「私も懐中時計好きだなぁ〜♪ アンティークな感じを見る方が多いかも。古い型も結構好き!」
 明日香はというと、好きな時計の話が出来て、かなりご機嫌の様子。
「でも……見る方は良くても、家の中じゃぁ合わないからなぁ〜」
 そういって、明日香は漱吹の空いた手をそっと繋いだ。
 ほんのりと暖かい温もりをその手から感じる。
 漱吹は何かに気づき、その繋いだ手を引いて、見つけた時計をつけて見せた。
「コレ、明日香ちゃん似合うかも」
 にこっと微笑んで。
「え、これ?」
 明日香はそういって顔を見上げた。漱吹の顔がすぐ目の前に映る。
「ウンウン、似合う似合う♪ あ、こっちの……どうかな?」
 次に漱吹は、明日香の腕につけたお揃いの時計を、自分の腕につけて尋ねた。
「漱吹、似合うよ〜」
 明日香はまだ、気づいていない。
 漱吹に抱き寄せられ、ほとんど体がくっついているのを。
 漱吹は明日香の言葉に、嬉しそうに微笑んだ。

 雪の舞う雑踏で、嬉しそうに笑いながら一組のカップルが歩いていく。
 その腕には、先ほど買ったばかりの、お揃いの腕時計が付けられていた。




イラストレーター名:月屋幻七