楢芝鳥・俊哉 & 鋒・勝子

●クリスマスの過ごし方

 クリスマスだからといって、全ての人が特別な日を過ごす訳じゃない。
 普段となんら変わりない日常を過ごす人の方が多いかもしれない。
 そんなクリスマス。

 クリスマスだからといって特別やることもない俊哉はこたつにはいって、ゲーム大会。
 ピコピコと鳴る電子音が、ジングルベルの変わりの様。
「メリークリスマス! って、何か面白そうなのやってるー! 私にもやらして!」
 突然なんの前触れもなく開かれる部屋の扉。扉が開くと同時に部屋に入ってきたのは勝子。
「うに? いいですよー」
 突然の勝子の乱入に、なんてことなく普段とかわりない受け答えをして、彼女にもコントローラーを渡す。
 ふたりで出来るゲームに切り替えて、再びゲーム開始。
 双六をやったり、落ちゲーやったり。
 一人でやるよりも、断然二人でやるほうが楽しい。
 あぁだ、こうだといいながら、時には軽く小突いたり、大声で笑ったりしながら楽しい時間を過ごす。
「もぉーこのままお正月までだらだらしてよっかぁ〜」
「その前に勝子ねぇは補習でしょ……。ほら、古文が赤点だったって言ってたじゃん」
「嫌なこと思い出させないでよ〜」
「落ち込まない落ち込まないー。ほら勝子ねぇ、よそ見してると負けちゃうよ?」
 楽しいゆるゆるした時間に勝子がこのままだらだらしていたいと言うけれども、そこへすかさず俊哉が現実をつきける。その現実の重さから、机に突っ伏す勝子。俊哉の声と共にゲームオーバーの音楽が流れた。
 そこで慌てて顔を起こし、コントローラーを持ち直す勝子だけれども、時既に遅し。「あーぁ」と、勝子はため息を漏らした。

 そうして色んなゲームをして楽しんでいる途中、はたと俊哉が何かを思いだした。
「あー、そだ。言い忘れてた。勝子ねぇ、メリークリスマス」
 ちょうど時計は日付が変わる少し前を指していた。




イラストレーター名:羽月ことり