●【クリスタルオーナメントに願いを】
月とツカサはこれから向かうクリスマスパーティーにドキドキ、ワクワク。
テーブルと椅子を借りて、後は持ち寄ったお菓子を楽しみながら、色取り取りのオーナメントで飾られたコウヤマキの木を眺める。
「ふわわわわっ、つ、ツカサさん!?」
月の素っ頓狂な声が上がったのは、ツカサが彼女の頬にキスをしたから。
あまりに突然の出来事にあたふたと、ひとり慌てふためく。
「お菓子を舐め取っただけなのだが……」
月の頬にお菓子がついていたからとっただけと、彼女の様子を不思議そうに首を傾げて見つめるツカサ。
そんな事がありながらも、楽しい時間はあっというまに過ぎていく。
もうパーティーは終わりに差し掛かろうとしていた。
パーティーが終わろうとしている事に気がついたツカサは月の手を取り連れて行く。
案内されたのはコウヤマキの下。
「ツリーに願い事をしよう」
「うん、そうだな」
綺麗なツリーを見た後、月を見るツカサ。ツカサの言葉にお願い事を何もしていないことに気がついた月も笑顔で頷く。
ふたりはツリーの前で願い事を祈る。
(「ずっと、ツカサさんの傍にいられます様に……」)
そんな願い事をした月はとなりのツカサをチラリと盗み見する。自分と同じようにツリーに向かって祈っている姿が目に入る。
一体彼が何を祈っているのか気になってしまうから、二人の祈りが終わった後、月が彼に尋ねてみた。
「ん? それはだな……」
月からの質問に、いつになく照れた様子を見せるツカサ。その視線は月を捉えては反らし、捉えては反らし、落ち着きなく動いた。
そんな事はきっと一瞬で、月が気がついた時にはもう彼の銀色がすぐそこにあった。
何もいう間もなく、何かをいう事もできず。
ただ吐息をはき出すのが精一杯だった。
二つが一つになる。
重なったシルエット。
強く抱きしめられる感触が甘く胸をつかんでいく。
―――――そうか。
抱きしめられる腕の中、これが彼の答え。これが彼の願い事。
月も応えるように、彼の背にそっと腕を回した。
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