●クリスマスは眠れない
テーブルに残っているのは、白い皿だけ。
さっきまではまきな手作りの、見た目にも可愛く美味しそうなブッシュドノエルがあったのだけれども、それは綺麗さっぱり二人のお腹の中へ。
おいしいものの後は、お楽しみ。
ふたりはテレビに向かい、ゲームを始める。
女の子ふたりではじめたのは、ちょっとカッコイイ格闘ゲーム。
ピコピコと電子音が響く中、二人の少女はテレビの中のゲームに釘付け。
「ふふふふ……」
コンボの連続でまきなから余裕勝ちをしていくピジョン。その顔には笑みさえ浮かぶ。
まきなが劣勢だからといって、手を抜くことはない。手を抜くのは相手にとって失礼なことだから。
全力でまきなに向かっていくピジョン。
そんなピジョン優勢の状況もしばらくしてくると、変わってくる。
「……あっ!」
ヤバイ。と、ちょっと焦るピジョンと、あまり表情が変わらず真剣な佇まいのまきな。
初めは劣勢だったまきなだが、持ち前の負けず嫌いが功を奏してピジョンに食らいついてきているのだ。
正座でぴんと背筋を伸ばして礼儀正しくゲームに向かっているまきなの様子からは想像つかないが、心の中では熱いものがみなぎっている。
ここでまきなに負けたくなくはない。コントローラーを握りなおし、ゲームに向かうピジョン。
ゲームは一進一退。
いつの間にか互角の戦い。
隣のまきなを見るピジョン。
たった少しの時間の中で、腕をあげてきたまきなに素直に動揺する。決まるはずのコンボが決まらなくなり、逆にその隙をつかれてまきなにコンボを叩きつけられてくる。
さっきまで優勢だったピジョンが今は、若干劣勢になってきていた。
けれどもそれがとてもうれしい。
「それでこそ我が盟友! それでこそ龍臥崎・まきな!」
嬉しくてピジョンが叫んだとき、無常にも大技コンボでピジョンのキャラが宙を飛ぶ。
ゲーム画面にはGAME OVERの文字。
残念とばかりに、ピジョンがピッとスタートボタンを押す。
こうやって何度も何度も、繰り返す。
もうはじめた時のようにまきなもやられてばかりではなく、ピジョンが劣勢になったりといい勝負が続く。
そうして二人は顔を見合わせて笑いあう。
寝ない! 寝かせない! 今日はオール!
二人でゲーム三昧。
飽きるまで一緒に楽しもう。
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