●お前を一生愛すと誓う夜。
窓からの夜景に、思わず溜息がこぼれた。
溢れ返る程の光の群れは、思っていた以上に、とてもとても綺麗だった。
「シャズナ」
部屋を暖かく照らすランプの明かり。
亮は夜景を一望できるソファの方へ、そっと名前を呼んだ。
促されるまま、どこかそわそわした様子で歩いてきたシャズナは、ちょこんとソファに腰掛ける。
向かい合うようにして亮も座ると、2人で静かに、窓の外の夜景を楽しむ。
一緒に過ごすクリスマスは、今年で3回目。
ずっと1人暮らしで、お世辞にも裕福とは言えない身分だったから、クリスマスなんて、いつもケーキを買うくらいで……だから、これまで、シャズナに大したお祝いなんて、してあげられなかったけど。
でも、今日は違う。
初めて出会った頃からずっと、今日のために少しずつ、こっそりと積み立ててきた貯金。
それを使って、ずっとずっと前から、このホテルを予約しておいたのだ。
片っ端から情報を集め、知り得た限りで最も素晴らしい、このとても夜景の綺麗なホテルを。
だって、今日は特別な日だから。
特別になるはずの日だから――。
「シャズナ、乾杯しようか」
ルームサービスで運ばれてきた食事を前に、2人はシャンパングラスを鳴らす。
クリスマスだけの特別メニューは、どれもとても美味しくて。思わず会話も弾みながら、楽しい時間が過ぎていく。
卓上には、ムードを盛り上げてくれるアロマキャンドル。
ゆらゆらと揺れる火が、2人の顔をほのかに赤く照らして……いや、もしかしたら。この灯りは、照れて赤くなっている2人の事を、優しく覆い隠してくれているのかもしれない。
「……」
ふと、最後に運ばれてきたケーキを食べ終わる頃、不意に亮の言葉が途切れた。
――言おう。今。
そう決めて、そっと取り出したのは小さなジュエリーボックス。小さく首を傾げるシャズナの前で、亮はその蓋を開けた。
中身は、シンプルなシルバーリング。
2つ並んだそれは、亮の分と、シャズナの分。
「――結婚しよう」
亮は、シャズナの瞳を真正面から見つめた。
自分にとって、シャズナはとても大切な存在。
中学3年の、あの冬に出会うまで、ずっと荒れた生活を送っていた自分を変えてくれたのは、他でもないシャズナだ。
今の自分があること。周りの大切な人達に出会えたこと……全て、シャズナのおかげ。
「……俺は、今も、今までも、シャズナをずっと愛してる。そしてこれからも、一生愛すと誓う」
だから、受け取ってくれないか?
そうリングを手にした亮を見上げ、小さく俯いて、それから。
もう1度見上げて、そっと片手を上げたシャズナに、亮は心底嬉しそうに笑いながら指輪を渡すと、そのまま優しく抱きしめた。
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