立見・鑑三郎 & 大桐・連花

●冬の花火と共にクリスマスを

 夜だというのに、イルミネーションの光がある街中は明るく輝いている。電飾は思わずこんな所にと言ってしまいそうな場所にある金属製の柵にさえ施されていて、鑑三郎は連花と共に柵に沿って歩いていた。
「どうかしら、鑑三郎さん。こっちに出てきてから買った物で組み合わせてみたんだけど、似合ってるかしら?」
「ふむ。俺はその色、連花殿にとても似合っていると思う」
 真横に持ってきた左右の手首を見るようなポーズで連花が自分の服を眺めながらくるりと回ると、鑑三郎は口元に手をあてながら率直に感想を述べる。
「本当? 気になってたのよ、こういうのって」
「連花殿はもっと自分に自信をもって良いと思うな」
 表情を輝かせた彼女に鑑三郎は口元に当てていた手を放して頷いた。そして、反対の腕がさりげなく連花へと差し出される。
(「こういう日は、それぐらいで丁度いいんだもの、ね」)
 連花は差し出された腕に自分の腕を絡めて、二人より沿い目的地へと向かう。今はただ星が瞬くだけの夜空に花が咲く場所へと。

 しばらくして、夜空に大輪の花が咲いた。
「花火といえば言えば夏を連想するが冬の澄んだ空気の下での花火というのもまた違った風情があるな」
「冬の花火、ね。花火っていったら、夏や秋だけだと思ってたわ」
 弾ける大きな音と共に次々と咲く花を眺め、時折視線を空からお互いと顔へと向け語りあう。話題はさまざま。
「能力者としての生活は……」
「寒くないかな、連花殿」
 その一つが何かを思い起こしたのか連花は僅かな間だけ視線を下へと向ける。だが、振り向いた鑑三郎の言葉と動作は彼女の小さな呟きをかき消した。抱き寄せられ伝わってくる温もりは、かき消された言葉の先にあったものさえ薄れさせてくれた。
「この銀誓館に来て一番の良かった事は貴女に出会えたことだ、連花殿」
「わたしも銀誓館に来て良かったと思ってるわ。ホントよ」
 花火の光で顔の半面をさまざまな色で染める彼氏へ連花は笑顔を返した。花火は赤く染まった頬の色を誤魔化して、空にを咲かせ続けている。
 真冬の花火大会はまだ終わらない。




イラストレーター名:安里