雪村・羽根 & 葬月・黒乃

●あなたへの距離

「あっ!」
 それを見つけたのは、羽根。
「黒乃せんぱい! 雪デス! 雪なのデスっ!」
「それじゃ、外に行こうか?」
「はいっ!」
 温かい格好で、二人はゆっくりと外へと出かける。
 出かけた先は、近所にあるとある公園。
 いつも見慣れた遊具も、今は白い雪に包まれていた。
 もちろん、枯れた木にも雪が積もり、まるで、雪が白い花のように見える。
「わあ……」
 舞い散る雪を手袋をした手で受け止めた。
 ひらひら雪。
「花びらみたいで綺麗……」
「花びら?」
 思わず黒乃が尋ねる。
「あの木、白い花が咲いたように見えるのデス。だから……」
「雪が花びら……か。羽根らしいね」
 微笑む黒乃に羽根も笑みを浮かべた。
「あ、そうだ! 黒乃センパイ、雪だるまつくりませんか?」
「いいよ」
 二人は舞い散る雪の中で遊び始めたのであった。

 雪だるまをつくり、雪合戦をして。
 思いっきり雪の中を駆け回った。
 そして、楽しみ終えた羽根は、そのまま黒乃の正面から抱きついた。
「羽根?」
 黒乃の胸に顔を埋めて。

(「幸せなの。すごく、温かくて。大好きなの。ずっと一緒にいたい。これからも、この先も」)

 ふと顔をあげると、そこには黒乃の優しげな笑みがあり。
 羽根も幸せそうな笑みで応えて。
 黒乃はそっと、羽根の額にキスをした。
 それは、二人だけの約束の印のように……。
 羽根は嬉しくなって、とびきりの笑顔を見せる。
「大好きです」
 またぎゅっと、黒乃に抱きついた。
 世界で一番、安心な腕の中で……。




イラストレーター名:総裕