武田・由美 & 七条・紫門

●Happy Christmas

 クリスマスになると、どうして心が躍るのだろう。
 2人で一緒に過ごすクリスマスは、とってもうきうきして、わくわくして……。
 もう、とにかく楽しみで楽しみでたまらない。

 見るからにそんな様子で、由美はパンフレットを覗き込んでいた。
 今日のためにしてきたお洒落が、ちゃんと似合っているのか少しだけ不安だけど……でも、これから紫門と一緒にクリスマスを過ごせるのだと思うと、そんな不安よりも楽しさの方が打ち勝ってしまう。
「で、どこ行くか決まったか?」
 クリスマスを楽しもうとする人々で賑わう周囲の喧騒を眺めていた紫門は、そう由美が持つパンフレットを覗き込んだ。
 ええっと、と由美は目をつけた場所をいくつか指差す。
 どの場所もとっても魅力的で、どこに行ってみようか、決めるに決められず悩んでいるようだ。
「ふんふん、なるほどな。じゃあ、とりあえずこの近いところからにしてみるか?」
 今いる場所から一番近い場所を指差して、なんとなくルートを考えていく紫門。その間も彼の顔は笑顔に満ちていて、今こうしている時間がとても楽しいことなのだと由美に知らせてくれた。
 互いに同じ気持ちなのだと思うと、なんだか嬉しくなる。
 由美も自然と笑みを浮かべて、紫門の意見を取り込みながら、特に行ってみたい場所をしっかり回れるようなルートを決める。
「じゃあ、早く行こ!」
 そのまますぐに歩き出して、紫門を振り返る由美。
 勿論だと言わんばかりに、紫門は力強く頷き返した。
 だって、自分の一番行きたい場所は、由美の行きたい場所なのだから。
 彼女が行きたいと言って、その場所に誘ってくれているのに、異論なんてあるはずがない。
 もしも彼女が望むなら、それが地の果てだろうと海の底だろうと、一体どんな場所だったとしても着いて行こうじゃないか。
「よし。んじゃ行くか」
 紫門は由美の隣に立ち、2人で並んで歩き出す。
 今日の、このクリスマスの日を、一緒に楽しく過ごすために……。




イラストレーター名:TOMOMING