●二人、街角で…
嶺と春直の二人はゆっくりと、クリスマスに彩られた街を歩いていた。
静かにゆっくりと、その歩調は互いに合わせるように……。
嶺は、春直の方をちらりと見ながら、今までの事を思い出していた。
ずっと恋愛をする事なんて無いだろうと考えていた、昔。
友達と一緒に笑って、馬鹿やって過ごせれば十分だったし、男の人達も男として意識してなくて友人だと考えていた。
春直とも最初は冗談から始まった恋愛ごっこ。
それから告白された時は本当に驚いたし、最初はどうすればいいかも分からなかった。
(「でも、今は……うん、幸せだよね」)
思わず淡い笑みを浮かべた。
まさかこんな事が、俺に起こるとは思いもしなかった。
春直もまた、ちらりと嶺の方を見ながら、今までのことを思い出す。
きっかけは、確かに冗談に過ぎるところがあっただろう。
それからどんどん好きになっていった。
この関係が冗談だったではおしまいになる……そんなのは嫌だと思った。
だからこそ、自分から告白した。
ヒトから見たらありえない告白かもしれない。
よく自分の恋人になんてなってくれたもんだと、思う。
(「だから……というワケでもねぇが、俺はこいつと楽しく、幸せにやっていこう」)
まずはと、寒がりな嶺の為に、寒い思いをさせないよう、どうするべきかを考え始めた。
「ちょっと寒くなってきたね」
(「さっそく寒がらせてるしよ……はぁ、なさけねぇ」)
寒がる嶺の言葉に、春直は思わず、心の中でため息をついた。
「手……繋ごっか……」
思わぬ嶺からの提案に春直は目を見張る。
(「暖も取れるし、何より嶺と触れ合える」)
それは一瞬の出来事。
「お、おう。寒いのはよくねぇな、風邪でもひいたらコトだ」
春直はそういって、自分の手を重ねた。
暖かいぬくもりが手から伝わる。
気がつけば、ちらちらと雪も降ってきていた。
暖かい場所を探しながら、二人は輝くツリーの横を横切るのであった。
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