●正しいクリスマス
「誰か私に正しいクリスマスを教えてくれ」
威風のその言葉がきっかけだった。
「いいよ、私が教えてあげよう」
威風にきとりが正しいクリスマスを教えるべく名乗りを上げた。
だがしかし、きとりのクリスマスも根こそぎ間違っているのだが……そのときの威風にはちっとも気づかなかったのであった。
さてクリスマス当日、ここは正装で迎えるべくとふたりはサンタ服に身を包む。故にサンタがふたり出来上がった。
「いいかい？ 枕元の靴下には、あんぱんと棒付飴を沢山つめるんだよ」
そういいながら、きとりはぽんぽんと用意したあんぱんと棒付飴を入れていく。
「なるほどな……でも、何で靴下に食べ物を入れるんだ？」
小さな疑問を抱いたりするけど、これが正しいクリスマスなんだと、とりあえず、きとりに倣って威風も靴下の中に入れていった。
次はお待ちかねのクリスマスパーティー。
「いいかい？ 目を閉じたら負けだからね」
二人はクラッカーを手に勝負に出た。
これぞ、クラッカー合戦の醍醐味！ きとりと威風の間に置かれた一つのクリスマスケーキをかけたバトルが今、始まる！
ぱあああああんっ！！
その結果、残念ながらきとりは思わず目を閉じてしまった。
勝ったのは威風。
「このケーキは貰ったっ」
威風の持っているケーキは、この冬大流行（？）の『謎の植物が刺さった青汁色のケーキ』。
ケーキの上にデコレーションされた植物が、ゆらゆら動いているように見えるのは気のせいだろう。
実際の所こんなケーキは流行ってはいない。その噂の情報とケーキは彼らが所属する結社から。
もちろん見た目の通り、食べればどうなるか簡単に予想がつく。
敗者となったきとりが、ケーキを食べようとする威風の方を捨てられた子犬のような視線を送り続ければ、かわいそうになって威風がきとりにケーキをわけてやる。
「そんな目をされてはたまらんからな」
「いいのかい、威風？」
嬉しそうに受け取り、二人で仲良くケーキをぱくり。
もちろん二人揃ってその場にうずくまった。
パーティーの締めくくりは、プレゼント交換。
二人は一斉にプレゼントを取り出した。
「威風、ありがとう！」
威風からきとりへのプレゼントは、きとりの好みを良く理解した棒付き球形飴が刺さったあんぱん。
「ありがとう、きとり」
さっきの食べたときの衝撃を忘れてしまったのか、それともその情報がかなり信用性が高いのか、きとりは威風へ青汁色のケーキをもう1ホールプレゼント。
さっき撃沈したばかりなのに、笑顔で取り出すと言うことはよほど信頼してる人からの情報だったぽい。
再度、ケーキを食べれば、懲りずに二人でまた撃沈。
真剣に「正しく間違ったクリスマス」楽しみましたとさ。
とっぴんぱらりんのぷぅ。
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新堂・威風 
