●『初めてのクリスマスw』
今年もクリスマスがやってくる。
いつもと変わらないはずのクリスマス。
けれど、この日は違った。
なぜなら、二人で過ごす初めてのクリスマスなのだから……。
「美女丸……まだですの?」
待ち合わせの時間より、少し早めにたどり着いた麗。けれど、周りの目が気になって仕方が無い。きっとそれは……。
「すみません、お待たせしてしまいましたね」
と、声をかけられた。
「び、美女丸……」
「あ、その……変でしたか?」
「い、いいえ。その、美女丸のタキシード姿は、初めてだったのですから……」
その答えに美女丸は淡く微笑む。
「オレも初めて見ました。その、麗さんのドレス姿……」
綺麗ですよとにこりと微笑んで、美女丸は手を差し伸べる。
「あ、ありがとうございますわ……」
麗は美女丸の手に自分の手を重ねた。
特別な日だからこそ、特別な事を。
二人はいつもと違う格好をしていた。
麗は和服から、黒のドレスへ。
美女丸は女装から、黒のタキシードへ。
「着きましたよ」
美女丸が連れてきた場所は、一際輝くクリスマスツリーの前。
「まあ……」
麗も思わず声を上げる。
「麗さん、これを受け取ってくれますか?」
そう、美女丸から手渡されたのは、一冊のアルバム。麗と出会ってからこれまでの思い出の写真を収めたものであった。
「はわっ。ありがとうございますわ!」
大切そうに抱きしめて、そして、麗も持ってきたプレゼントを取り出した。
「これは、わたくしからのプレゼントですわ……」
そういって、美女丸の首に手編みのマフラーをかける。
「これは暖かいですね。ありがとうございます、麗さん」
美女丸はそういって、優しく微笑んだ。
ふと、気がつくと雪がゆっくりと降ってきた。
「美女丸、見てくださいな。雪ですわよ……」
そっと白い雪を手に取り、消えていく様を眺める麗。
と、身を震わせる。
無理も無い、肩や背中が見えるドレスを着ているというのに、何も羽織っていないのだから。
美女丸は彼女の肩に自分のコートをかけ、そして抱きしめた。
「!」
突然の事に驚きを隠せない麗。その麗の耳元で美女丸は囁く。
「これからも、一緒にいましょうね」
麗はその言葉に静かに頷いたのであった。
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