諏訪・沙夜羅 & 月見里・神室

●Memories at Christmas〜Afterwards 〜

 最初は特に意識していなかった。
「神室と出会ってから、どのくらい経ったのかな?」
 沙夜羅は窓の外に見える、舞い散る雪を眺めながら呟いた。
「そうだな……」
 神室もそう呟く。

 神室を異性として意識しはじめたのは、いつだっただろう。
 結社で話をしたり、一緒にトレーニングを積み重ねるにつれて、いつの間にか気になっていた。
 互いの想いにも気づき、一緒に居る事が楽しくなっていた。

 そして、先日。
 連休に行った山ごもりの修行で、やっと互いの気持ちを伝え合い、確かめ合った。
 繋がる想い。
「あの時は……凄く嬉しかったよ」
 神室以外には決して見せない女としての自分が、そう囁いた。
「俺も、だ」
 神室の手が沙夜羅の手の上に重なった。

 雪がまだ降っている。
 小ぶりになっただろうか。
 沙夜羅はぼんやりと、外の風景を眺めていた。
 今、神室はこの部屋にはいない。
 けれど、神室がいた暖かいぬくもりが、そこにはあった。
 思わず笑みを浮かべる沙夜羅。
 なんて、幸せなんだろう……外の雪を見つめながら、またぼんやりとしていると。
「沙夜羅」
 目の前に暖かいコーヒーの入ったカップが差し出される。
「ありがとう、神室」
「どういたしまして」
 神室は沙夜羅の隣に座って、コーヒーに口をつけた。
 沙夜羅もそっと口につける。
 静かだけれど、そこに大切な人がいる。
 それだけで充分であった。
「あ、ごめん。すぐ戻ってくるから」
「ん」
 どうやら、手洗いにしに向かうらしい。足早に神室が席を立つ。
 また、沙夜羅はぼんやりとしている。今度は神室が入れてくれたコーヒーを眺めながら。

「わっ……」
 思わず沙夜羅は小さな声で叫んだ。
 あまりにもぼんやりしていたせいか、神室が戻ってきたことに気づかなかったらしい。
 後ろから突然抱きしめられ、沙夜羅はもうと呟いた。
「驚かせすぎたか?」
「神室のいぢわる……」
 微笑む神室につられて、沙夜羅も笑みを浮かべた。
 しばらく、そのまま一緒に。
 抱きしめられながら、沙夜羅は一緒にいられる幸せをかみ締めるのであった。




イラストレーター名:サトツ