御厨・和沙 & 望月・英二

●二人で一緒のクリスマス

 賑やかな雑踏の中、和沙と英二は二人並んで歩いていた。
 行き交う人々も忙しなく感じるのは、きっと、今日がクリスマスだから。
 誰にとっても、特別な日……なのだから。

「やっぱりさむいねー」
 きっちりコートを着ていたが、吐く息が白いと、それでも寒く感じてしまう。
 冷たくなった手を擦りながら、和沙はぶるっと身震いした。
「そうだね」
 そう呟く英二。
 震える和沙の姿を見て、何かを思いついた。
 とっても素敵で、自分も相手も暖かくなる方法を。
「じゃあ、こうしたら温かいかな?」
「わわっ!!」
 和沙を後ろから抱きしめ、ふわりと自分のマフラーを首に巻いてあげる。
 背中越しに伝わる温もり。
 首にかけられた、暖かい優しさ。
 どれもが嬉しくて、とても暖かで……。
「あったかい?」
 尋ねる英二の言葉に、和沙は頬を染めながら嬉しそうに答えた。
「う、うん。あったかいよ」
 そっと、英二の腕に自分の手を添えて、続ける。
「それとね……英二くんの鼓動が伝わってきて、すごく安心できちゃう」
 和沙は嬉しそうにそう告げて、英二の方へと振り返った。
 眩しく映る、和沙の笑顔。
 英二は嬉しそうに、幸せそうに、その瞳を細めた。

 ふわふわと、雪が舞い落ちる。
「あ、見て! 英二くん! 雪だよ!」
「ホントだ……今年もホワイトクリスマスだね」
「う、うん」
 その雪は、まるで二人を祝福するかのように、舞っているように目に映る。
「もう少し、見ていようか」
「そうだね……」
 二人はゆっくりと、雪が舞う夜空を見上げたのであった。




イラストレーター名:市松ちどり