平等院・鳳凰 & 室岡・雪里

●聖夜の告白

 雪が舞い散りだした夜の公園。
 雪里がやってくるのを待つ鳳凰。
 師匠と弟子という関係だった。その関係にいつから別の感情が邪魔をするようになってきていた。
 鳳凰は雪が舞い降る空を見上げる。
 好きだという想いは事実。
 今までの楽しい関係が壊れてしまうのも怖い。けれども伝えると決めていた。

 鳳凰に急に呼び出された雪里。
 なんで呼び出されたのか見当もつかないが、待ち合わせ場所の公園へ。
 そして、たどり着いた公園。鳳凰の姿を見つけ、雪里はそちらに向かって近寄る。
「お前が好きだ、雪里」
 雪里が声をかけるよりも先に、言葉を発した鳳凰。
 そのまま雪里の動きが止まってしまう。
「師匠、私は……すぐいなくなるかもしれない。貴方を置いて、どこか遠くで死んでるかもしれない。そういう奴なんだ、私は。わかるだろう……」
 静かに雪が降る中、震えるような雪里の声が鳳凰に届く。
「どんなになっても……雪里は雪里だろ? 他になんだって言うんだ?」
 黙って聞いた後、鳳凰が言葉を発し、一歩雪里の方へと近づく。
 どこか遠くだなんて……、そんな寂しいことはさせないから。
「……竜宮城の時も言っただろ、大丈夫だ俺が居るって」
「いいのか……? こんな私で、いいのか……!?」
 夏のあの日に彼女に告げた言葉をもう一度告げる。
 この気持ちに迷いはないと真っ直ぐに、雪里を見つめて。
 鳳凰の発する言葉に、思わず涙声になる雪里。
 彼女の言葉もその思いも全て包み込むように、鳳凰が優しく雪里の体を抱き寄せ、しっかりと抱きしめる。
「あり、がとう……」
 雪里の震える声。
 鳳凰に抱き寄せされて、胸に頬を寄せれば雪里の瞳から涙がこぼれ落ちる。

 夜の公園はどこまでも静かで、雪は変わらず降り続く。
 今までは師弟関係だったが、これからは恋人同士としての関係がはじまる。
 ただ今は互いに体を寄せ合って、互いの体温を感じ、その存在を愛しく愛しく包み込む。
 ただ雪は静かに変わらず、公園を白く染め上げていた。




イラストレーター名:玄吾朗はるか