高崎・優一 & 優一のグレートモーラット

●クリスマス 〜最高のプレゼント〜

 大好きなモーラットと楽しいクリスマスパーティーを終えた夜。
 優一が眠ったのを見計らって、優一のグレートモーラットはちょこちょこと動き出した。
 モーラットの名はカント。
 そのカントの手には不器用にリボンが掛けられた小さな小さなプレゼントの箱。
 今宵、カントによる秘密のミッションが開始される!

 きぃ……。
 カントはどきどきしながらも、そっと中を確認する。
 優一はベッドの中。すやすやと眠っている模様。
 扉を閉めようと思ったが、また音を立ててはいけないと思い、そのままにしておく。
 とっててて。
 目的地を確認。
 吊り下げられた靴下は、ベッドの上の優一の側に掛けてある。
 カントはそっと、ベッドによじ登り、靴下の側に駆け寄った。
 後は、持っているプレゼントを靴下の中に入れるのみ。
 静かに靴下の側までこれたカントは、嬉しそうにごそごそとプレゼントを入れ始めた。
 しかし、何かが引っかかるのか、なかなかきちんと入ってくれない。
 ごそごそ、ごそごそ、ごそごそごそ……。
 かなり悪戦苦闘していると。
 ずるり。
 必死になるあまり、自分の足元のことを疎かにしていた。
「きゅい!?」
 ごろごろがしゃーん。
「……ん〜、こんな夜中にどうしたの〜?」
 どうやら、今回のミッションは失敗に終わってしまったようだ。

 優一は起き上がって、ベッドの下を見た。
 そこには、解けたリボンを体に絡まらせ、耳に靴下を引っ掛けたカントがいた。
 まるでプレゼントのように。
「きゅい〜」
 カントは上目遣いで優一を見る。その様子にくすっと優一は笑みを浮かべた。
「もしかして、カント君がプレゼントなのかな」
 そっと手を差し伸べ、カントを抱きしめる。
「ありがとう。最高のクリスマスプレゼントだよ」
 優しい腕の中でカントは、ちょっと首を傾げたが、すぐにきゅいっと笑みを浮かべた。
 そう、大切な人が幸せならば、それでいいのだから。

 クリスマスの夜。
 優一とカントは幸せそうに微笑みあうのであった……。




イラストレーター名:峯田 明